むのきらんBlog

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北朝鮮の水爆は自爆戦略だ

 

北朝鮮が水爆実験を行ったことを発表した。それにはどんな意味があるのだろうか。

 

  • 北朝鮮の水爆」は、一般的な戦略では理解できない。

北朝鮮の戦略は、米国から攻撃されない存在になる、ということだ。そのために核兵器と弾道ミサイルの開発を進めている。現在のところ、弾道ミサイルは日本を飛び越えられるところまできたが、米国はまだ遙か先だ。また、弾頭に搭載する核兵器の小型化も不可欠だ。

この戦略を合理的に進めるためには、国家資源をこれに集中するのが適切だ。原爆の100倍前後の破壊力を持ち、しかし、その分大きくなる「水爆」は、この戦略からは理解されない。いわば寄り道である。

 

  • 「自爆兵器」としての水爆

 

アクション映画でしばしば出てくるのが「悪役が秘密基地などのの自爆装置を起爆させる」というシーン。「北朝鮮の水爆」はこれで理解できる。金正恩氏も007の映画が好き、といわれている。

鍵は水爆の破壊力にある。朝鮮半島の地図を見てもらいたい。

ソウルは、軍事境界線の38度線から最短で30㎞ほどに位置する。一方、ピョンヤンは200㎞以上離れている。軍事境界線の近くに水爆を積んだトラックを配置したらどうだろうか。

島型原爆の威力が半径2㎞とすると、その50倍の威力の水爆を置いたらば、ざっとであるが、半径100㎞だ。(威力の倍率と破壊の半径は厳密には一致しないが、威力は水爆の大きさで決まるので、ざっくりとこのように言える。広島の半径2㎞は、おおよそ全焼・全壊半径だ。)

 

  • ボタン一つで「ソウルを火の海」にできる

北朝鮮は、これまでもしばしば「ソウルを火の海にする」と威嚇してきた。既に北が保有しているロケット砲など通常兵器でも、「ソウルを火の海」にはできる。しかし、それには多数の兵器の動員が必要だ。

水爆は、一つで十分に「ソウルを火の海」にできる。ソウルは人口1千万人、韓国の5分の1が住む、いうまでもなく韓国の心臓部だ。しかも、半径100㎞の水爆であれば、広域ソウル圏全体を火の海にすることが可能だ。

一方、ピョンヤンまでは軍事境界線から200㎞あるので、安全圏だ。もちろん、軍事境界線付近の北朝鮮も壊滅するが、それは北朝鮮にとっては、いわば尻尾であり、北朝鮮の体制そのものの壊滅を意味しない。いわばであるが、「肉を切らせて骨を断つ」ことが確実にできるのが、水爆なのだ。

したがって、水爆実験の直接的な意味は、対米国というよりも、韓国に向けられたものと理解することができる。

 

  • 「そんな自爆的な兵器を使用するはずがない」は我々の価値観

北朝鮮首脳部の価値観は、我々とは全く別のところにある。

それは丁度、先の大戦末期において、日本人の生命よりも「国体」を守ることに、旧日本政府が固執したことを思い起こせば、理解できるはずだ。

現代日本の価値観で考えるのではなく、北朝鮮の価値観を想像することで、北朝鮮の戦略の実像が等身大で理解できる。