むのきらんBlog

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マイナス金利騒ぎは心理バイアスだ

日銀のマイナス金利政策が、世間を賑わしている。株価や為替も激しく上下動し、「これまでにない世界になる」といった論調が見られる。

これらの反応を行動経済学的に捉えてみると、参照点(アンカリング)バイアスと損失回避バイアスがあることがわかる。

つまり「金利ゼロ」が行動経済学的な特異点(参照点)にある、ということだ。

 

(目次)

純理論的には、プラス金利だろうがマイナス金利だろうが、本質的には大差ない。プラス0.1%とマイナス0.1%の差は、たった0.2ポイントである。これはプラス0.1%とプラス0.3%の差と同じだ。0.1%の金利が0.3%になっても、さほど騒がれない。

また、仮に1%の金利がついても、2%のインフレならば、実際の価値は1%も減価する。こちらのほうが遙かに大きい。

 

しかし、人の感覚はそうは捉えない。名目上のプラスかマイナスか、ということに囚われるのが人間の認知バイアスである。ちなみに適度なインフレが正当化される根拠の一つがこれだ。

 

そして、100円の利益と100円の損失では、損失のほうが重く感じる、という「損失回避バイアス」も働く。

 

  • 投資家はどう行動すべきか

バイアスを客観視できるプレイヤーはバイアスに囚われたプレイヤーよりも有利だ。後者は前者の飯のタネになるのだ。

ただし、バイアスだろうが何だろうが「市場は常に正しい」ことも真理なので、市場との距離感が大切だ。バイアスによる揺れは短期、ファンダメンタルズによる相場は長期、と考えることができる。たとえば為替相場や株式相場は、長期的には理論値に収斂することが実証されている。したがって、長期投資のスタンスならば、バイアスに囚われないことが正解だ。

 

では、長期と短期の境目はどのあたりだろう。私は「マイナス金利」をめぐる騒ぎは、半年もすれば忘れられると考える。世界を見渡せば、EU諸国など、はすでにマイナス金利になって久しいのだ。

 

ちなみに、私の参照点は「3%」だ。いまどき旧い参照点にとらわれていると言われるかもしれないが。3%というのは、世界的で超長期的な過去データからみた、オーソドックスな無リスク実質金利である。したがって、現在の世界各国の金利水準は、異常な低さにある。

お金をモノ(国債でも何でもいいが)に変えるのには、3%ぐらいの利回りが適切だろう。現金(普通預金)は、いつでも引き出せるお金だ。その利便性の価値は、逆に言えば3%くらいの利回りに匹敵すると考える。

 

現状は、世界景気を金利安と政府の財政支出で下支えしていることを示している。つまり不健全な状況だ。本来は、適切なメカニズムやルールがあれば、先進国のイノベーションの力と新興国の豊かさへの欲望があいまって、妙な下支えをしなくても上手くいくはずだ。しかし、残念ながら現在はそうではないらしい。

 

  • 具体的な投資の判断基準はリスクプレミアムを考慮する

ある投資案件があり、インフレ率を考慮しなければ、たとえばリスクプレミアムを2%とすれば、無リスク金利3%とリスクプレミアム2%の、計5%以上のリターンがあれば有利、と考える考え方だ。

これは、言い換えると、20年で投資を回収することと同じだ(単利ベースで)。どんなに堅い投資案件でも、元本が保証されない投資である以上、ゼロになることも考えざるを得ない。

 

この見方からすると、現在は健全な投資案件が少ない。もしもバーゲンセール(大暴落)が来たら、買うつもりだ。

 

なお、「コストの見える化」という点で、次の記事は一理ある。

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