もし四国を二人で二分割るするとしたら、あなたならどう分けるだろうか?
画像はWikipediaより。
このお題は、元はBLOGOSで大久保陣太さんとホワイトメタルさんというコメンターが考え、議論しているお題だ。それを、大久保陣太さんが、私に振ってきたもの。
大久保さんはこう書いた。
二人で公平に四国を分割する例題を考えています。 「公平」っていう普遍的真理のもとに四国を二人で分割するってとても難しい。
つまり、公平に分割する、というところがポイント。戦国時代ではないので、もちろん力づくは御法度だ。お互いが納得できるように分けるにはどうしたらよいか。
あなたなら、どうする?
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どうだろうか。私の答えはこうだ。
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古典的な分け方の知恵
昔からある利害調整の方法がある。 それは、Aさんが分割案をつくる。そしてBさんがどちらかを取る。という方法。 もちろん、その逆でもいいわけ。 暴力ではなく、裁判でもなく、平和的に分割する方法だ。
実はこれは、土地を二つに分ける、宝石などのお宝を二人で山分けする、といった時に、昔から行われてきた知恵だ。兄弟でケーキを切り分ける、といった時にも使える。
姉が二つに切って、妹が好きな方をとればいいのだ。真四角なケーキならば簡単だが、トッピングが乗っていたりすると、なかなかスリリングだ。片方は、いちごが二つ、片方は大きいオレンジが一切れ、みたいな。
分割案を作るほうは、どちらが残ってもいいように、必死に公平につくる。もう一人は、分割案を見て、自分がいいと思うほうを取ればいいわけだ。
(はやさかゆき 写真素材足成より)
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古典的な分け方には限界がある
ただし、これは万能ではない。四国についていえば、たとえばAさんが山で分ける派、Bさんが川で分ける派の場合は、残念ながら合意できない。Aさんの分割案は山では公平だが、「川派」のBさんはAさんの分割の方法論自体に反対だから。
そういう価値観の違いは、しばしばある。昔の人の知恵は、価値観が似通った場合を前提としていたのだ。せいぜい、イチゴとオレンジくらいの違いで。
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今風な分け方の知恵
ではどうするか。
それぞれが山で分割する案、川で分割する案を一旦出す。その上で、山と川の根源的利害や価値を共有する。 そうすると、たとえばAさんは、山といっても石鎚山など有名な山にこだわっている。Bさんは、川といっても水資源にこだわっている、ということがわかる。これを「利害分析」と名付けておこう。 そうなると一歩前進だ。それぞれ本当に欲しいものを整理し、なくてもいいものも明確になっていく。双方が優先度を順位付けしてリストをつくってもいい。ほしいものの優先度の上から、両者が取っていく。
こうして、両者が受け入れ可能な案ができていく。
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合意の切り札、BATNA
ところで合意の最大の誘因はなんだろう。 それは合意しなかった場合の不利益だ。それが大きければ若干不満でも合意する。小さければ無理に合意しなくていいわけだ。
合意しなかった場合の対応のことを、交渉理論では、BATNA(バットナ:Best Alternative to Negotiated Agreement)という。相手から提示された選択案以外で、最も望ましい代替案、と訳すことができる。
この場合は、2分割しないということがBATNAだ。合意した場合よりも、BATNAが大きければ、そもそも合意しなくていいわけだ。普通は、合意したほうが得なので交渉する。ところがいつのまにか、それを忘れて、相手との損得ばかりに気をとられてしまう。少しでも「損」と感じたら、怒りにまかせて交渉決裂!とばかりに席を立ってしまう人がいる。
一旦、席を立つのもいいだろう。しかし、そこから離れて外の風に当たりながら考えてみよう。自分にとって最善でなくても、分割しないよりはまし、ということはないだろうか。
そこまでの考えに至ったら、席にもどろう。相手も同じように考えているはずだ。きっと合意に達するだろう。
いずれにしても、まずは相互理解と尊重。その上で方法論について合意する。というステップが重要です。
昔の知恵と今の知恵、上手につかってわけわけしましょう♪