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重要事項説明は契約当日でいいのか~事前にしっかり確認を~

家や土地を、買うときや借りるとき、契約書に署名する前に、「重要事項説明」っていうのがありますよね。なんだか儀式みたいなアレ、業者さんの言うなりにチャチャッとやっちゃうと、後になって困ったことになるかも、っていうお話です。

 


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重要事項説明はいつ?

重要事項説明は、契約の前にすることになっています。

宅地建物取引業法第35条 重要事項の説明等) 太字筆者

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

しかし、この「契約の前」というのがくせ者。契約書にハンコをつく当日でいいわけです。というか、現実のほとんどの重要事項説明は、そのように行われています。重要事項説明書を業者(宅地建物取引士)が読み上げて、「質問ありますか? なければ、こちらに署名捺印を。続いて契約書に移ります」っていう感じ。

さらに、「説明を省略していただいて結構です」なんていう「当事者」もいるわけ。(それで業者が「では、そいうご要望でしたら説明を省略させていただきます。」っていのは、違法です。とはいえ、現実にはあります。)

そんな感じで、不動産の取引現場では形骸化しているのです。

 

「重要」だから「重要事項説明」

当事者は、早く手続きを済ませたい、ハンコを押してすっきりしたい、という気持ちで、契約当日は サクサク進みます。

 

でもちょっと待ってください。本当にそれでいいのでしょうか?

そもそもなぜ、「重要事項説明」というのが始まったのでしょう。それは、契約当事者を保護するためです。業者は早く契約をしたいので、不利なことを言わないことがあります。それで買い手や借り手が泣きをみないために、必ず説明しなくちゃいけませんよ、っていうことを法律で決めたわけ。

 

実際に、そんなはずじゃなかった、と後で問題になることがあります。

たとえば、地震で液状化が起きて買った家が傾いた、なんてことも。そういう危険があることを、あらかじめ教えておいてくれたら、買わなかった、とあとで悔やんでも遅いのです。

重要事項説明書がないと、あとで、言った言わない、ということも証明が困難で、水掛け論になるわけです。

 

重要事項説明書は事前にもらえるか

こんなに大事な重要事項説明。しっかり読み込んでおこうと思って、「説明書を読んでおきたいから、事前にください」と頼んだ時に、快諾して送ってくれる業者と、「契約当日にならないとできません」、という業者があります。

前者ならば、まあ合格。後の業者は、要注意です。契約のタイミングが非常に早く、重要事項説明書の準備がぎりぎりにならないと間に合わない、といった事情があれば別ですが、重要事項説明は大切だからこそ、法律で業者に義務づけられているものです。もし、そこで、納得できない内容ならば、契約をしない、といった「覚悟」が必要なものなのです。

 

ところが実態は、契約当日になってはじめて書類を見せることが結構横行しています。

そこで内容に心配な点があれば、業者に聞くわけですが、微妙な内容であれば、他の専門家にセカンドオピニオンとして尋ねたくなるはず。不動産業者は、一通りの知識は持っていますが、たとえば、土壌汚染や建築などの個々の分野での専門家ではありません。ですから、難しい内容であれば、本来はその分野の専門家に相談すべきです。

しかし、契約当日では、到底そんな時間はありません。

契約の相手、たとえば売買の契約でしたら、売り手も目の前にいます。そういう状況で、大金の契約に、いまさら「ちょっと待った」とはなかなか言いにくいものです。

 

ですから、重要事項説明書は、最低でも、契約の1週間くらい前には送ってもらって、十分に読み込み、疑問があれば問い合わせたり、別の専門家に相談する。最悪、契約予定日をずらす、といったことが必要なのです。(契約予定日をずらす、というのは、相手があるため、実はなかなか難しいことなのですが、十分に正当な理由があれば基本的には可能です。) 

 

ところで、これまで売買の場合の買い手や、賃貸の場合の借り手の側を前提に考えてきました。

一方、 

売り手や貸し手はどうでしょうか

法律上は、業者は売り手や貸し手に説明する義務はありません。とはいえ、業界では、売り手や貸し手にも、書類を渡し説明することが望ましいと指導しています。重要事項説明書は、売り手や貸し手にとっても非常に重要だからです。

 

なぜなら、もしも、何かのトラブルになったときに、トラブルの矢面に立つのは、業者だけではないからです。

たとえば、土壌汚染といった隠れた瑕疵(かし、問題点)があった場合、業者は調査や説明責任を追及されますが、瑕疵担保責任などの責任は、あくまで売り手にあります。

ですから、重要事項説明は、売り手や貸し手の側にとっても重要です。こちらも事前に、業者からもらって、よく確認しておくことが大切です。

 

業者が重要事項説明で失敗したり、業者も知らなかった場合、結果的にそのトラブルは、売り手や貸し手にも回ってくる可能性が高いのです。

買い手や借り手にとってはもちろん、売り手、貸し手にとっても、とても大切な重要事項説明。業者のペースにはまらずに、面倒でもきちんと確認することが大切ですね。

 

あとで問題が起きて悔やんでも、その時では遅すぎるんですっ。