本件は「安心」をめぐる騒ぎであり、「安全」とは余り関係がない。(安全性については、横浜市が再計算して問題ないとしている。)
そして、「ズレがあったこと」「データ偽装があったこと」の2点のみが確認できている事実であり、因果関係も含めそれ以外は未確定だ。
ただし以下は難しいところだ。
<不安を煽った最大の責任者は三井不動産レジデンシャルであります。なぜなら、会社として建て替えをオファーしたことでこの建物はダメ物件のレッテルを貼ってしまったのです。つまり、不動産業を営む者から見れば三井不レジは最悪のシナリオの戦略をとってしまい、世間の不安を煽ったわけです。>
・・・そうなのだが、私も同社の社長だったら同じ判断をした可能性が高い。
本件はブランドを守るために法的責任や経済合理性を超えたコストを決断したものだ。
1.入居者、マスコミ、そして国民の「絶対安心」を求める連合軍に対し、個々の企業は弱い。ブランドの本質が科学的「安全」よりは心理的「安心」を売る商売だからだ。
なので同社の対応を批判する気になれない。ただし自社のコストで終わらずに、筆者の指摘するように不動産業界全体、回りまわって消費者のコストアップにつながるという問題がある。耐震偽装問題と似たような構図だ。
同社は勇気をもって「合理的な対応」を訴えるべきかもしれない。それは同時にマスコミ、国民、業界、政府全員の責務でもある。
2.仮に三井不レジが1棟改修や1棟建替え、他棟の入居者には保証書と迷惑料の支払、という「合理的な提案」をしていたらどうだろうか。
世間と入居者は「三井不レジ」を一層批判し大騒ぎになり、それでは済まなくなる。私もダメージコントロールとしてこんな小出しの「戦力の逐次投入」は行わない。
経営者目線でも考えてみることが問題の理解になるのではないか。
12月10日 11:41