むのきらんBlog

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中佐は知性派?

 

先日の「サウンドオブミュージックのトラップ大佐は少佐」に関連して、中佐について。

 

中佐は大佐の代理。

中佐は米陸軍では「ルテナントカーネル lieutenant colonel」。

このルテナントとは、

http://www.sailingnavy.com/modules/ageofsail/59.htmlによれば。

Lieutenantは中世フランス語でlieu-(代わり)+tenant(所有者)。「上官の代理者」が原義

とのこと。更に調べると、lieuはフランス語で場所、 tenantは、ラテン語のten=保つ+ant=人から来ている。

ちなみにビルのお店のことを、テナントというが、つまり「占有者」という意味だ。

それはともかく、CaptainとかColonelが、「長」(一番エライ人)を意味するのに対して、ルテナントは、長の代理という意味だ。その分、若いので、カッコイイとされる。

ちなみに英国陸軍では、連隊長たる大佐が名誉職的で、実際に指揮するのは中佐が多い。まさに代理だ。

 

中佐の階級章はオークの葉。

ところで米軍中佐の階級章は、銀色のオークの葉である。なぜオークなのか。

オークは永続や知恵を意味するので、私の推測だが、長を補佐する幕僚に不可欠な知恵からきているのではないか。

ちなみに、オークは、日本でいう楢(ナラ)類である。ドイツの有名な「柏葉付き騎士十字章」(戦争映画で、ドイツ軍将校がのど元に着けているもの)は、ヨーロッパナラである。葉がナラ類の一種である柏(カシワ)に似ているので、「柏葉」と訳されている。これは、Wikipedeiaによれば。

1813年に最初に鉄十字章を導入したプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の妻ルイーゼ王妃を記念したものとされる

とのこと。ルイーゼの記念がなぜオークなのかは不明だ。家紋なのかも知れない。

 

大佐の階級章はワシ。

ついでに、米軍の大佐の階級章は、鷲であるが、これは米国の国章からきている。

紋章としての鷲の意味は、Wikipediaではつぎのとおりだ。

鷲は、強さ、勇気、遠眼、不死などの象徴として使われ、空の王者や最高神の使者とも考えられた。神話では、ギリシャ神話ではゼウス、ローマ神話ではユーピテル、ゲルマン部族ではオーディンユダヤ教キリスト教の聖書では神、キリスト教芸術では福音記者ヨハネなどに関連して使われた。

古くはローマ帝国の国章とされ、ヨーロッパを中心として関連した帝国、王国、貴族、都市、教会などで使用された。現在のドイツ、アメリカ合衆国ロシア連邦、エジプトなどの国章にも使われている。

なので、大佐が強さのシンボルの鷲、中佐が知恵のシンボルのオーク、という理解でよろしいかと。

戦争映画で、無謀な作戦をいけいけどんどんが大佐や大尉、それに批判的で慎重な知性派の中佐や中尉、というパターンが多い。実際が必ずしもそうとはいえない(中佐や中尉が昇進して大佐や大尉になるわけなので)が、役目柄も含め、そういうイメージがあるのでしょうね。

一般に、大佐は連隊長や旅団長、大尉は中隊長が基本職務であるのに対し、中佐や中尉は参謀的役割が多いので。もちろん、「参謀」が「隊長」より慎重かというと、そういうことではないでしょうが。最終決定者、実行責任者ではない分、無謀な作戦を立案することもありえるわけで。

 

余談ながら、鷲を国章にしている国は米国の他にもいくつかある。ドイツもその一つだ。第二次大戦のヨーロッパ戦線は、「鷲(ナチスドイツ)対鷲(米国)の戦い」でもあった、といえる。

ただし、ヨーロッパ戦線の全体像としては、一般の認識とは異なり「ドイツ対ソ連の戦い」が戦争の中心であり決定的であったことは押さえておきたい。私たちは、アメリカ映画などを通じて、ゆがんだ像を信じ込まされているのだ。「中佐が知性派」という神話と似ているわけですね。