むのきらんBlog

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自由に考えよう

映画「ユー・ガット・メール」をもうちょっと楽しむトリビア

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1998年の映画「ユー・ガット・メール(You've Got Mail)」はロマンティック・コメディの秀作です。私も大好き!。未見の方は、是非。

20年近く前の映画だが、当時の最先端のツールである電子メールとライブチャットが登場する。もちろんスマホ以前だ。 なので、当時の時代背景も含めて若干のトリビアを。

(ある程度年齢を重ねた方にはトリビアでも何でもない当たり前のお話が入っています。わずかにネタバレがありますが、興趣を削がない範囲と思っています。)

 

www.youtube.com

 

パソコンを立ち上げると出る「ビーガガガ」って

主人公キャスリーン(メグ・ライアン)がPCを立ち上げる。液晶のラップトップPCが出だした時代だ。今はラップトップ(膝乗せ型)という言葉もほぼ死語ですが。

ネットに接続する際に、なにやら「ビーボガガガ」といった雑音がする。

これは、電話の音声回線を使ってデータ通信を行っていた際の接続音。データを音に変換していたわけ。ちなみにファックスは未だにこれを使っています。

なので、もちろん通信速度は極めて遅い。ホームページを検索するシーンが出てこないのは、静止画のHP画面が出てくるまでに3分かかる、という時代だから。もちろん、動画なんてほぼありえない。ブラウザさえも普及していなかった。

主人公が使っているのは何

キャスリーンとジョー(トム・ハンクス)はハンドルネームで文通するメル友なのだが、メールとライブチャット機能のみを使っている。

何で家でだけメールするかといえば、外ではほぼメールできなかった。もちろんスマホなんてありません。携帯電話はあったが、できるのは電話だけで、ネットにつながっていなかったのだ。1999年のドコモのiモードが世界初のネット接続サービスだったのだ。したがって、メールするには、家に帰って、PCを立ち上げて、ということになっている。

 「サイバーセックス」って何

キャスリーンの店の店員のおばあさんが「サイバーセックスをしている」というセリフがある。これは、ライブチャットを使って、文字で相手と想像上の性行為をすることだ。それが最先端の風俗だった、のどかな時代だったんですね。

 「フォックス書店」と「ジュンク堂」「蔦屋」

ジョーが経営者をつとめる敵役である大手の本屋「フォックス書店」は、「バーンズ&ノーブル」がモデル。単に格安販売の店ではない。

(なお、米国は、書籍の価格を店が自由に決められるのだ。日本は、再販売価格制度という法規制により、基本的にはどの店も(ネット書店でさえ)書籍価格は定価販売が義務づけられている。)

ところで「バーンズ&ノーブル」は、当時(1998年時点)なかなか居心地のよい本屋である。ゆったりしたイスが多い店内。映画でもあるように、カフェも併設されている。カフェでミニコンサートも開かれる。

これを日本に導入したのが、ジュンク堂であり、最近の蔦屋の新型店。(代官山や二子玉川など、ほんとにすごいです!)。

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画像出典:丸1日時間が潰せる本屋!ニューヨークで1番大きい書店『Barnes & Noble』

スタバ

スタバが登場する。もちろんスタバは1998年当時、すでに大手だ(もとは小さかったが急拡大した)。映画は大手対個人商店の話しなのに、キャスリーンも全く抵抗なくスタバを使っている。カフェ業界も映画の舞台となった書店を同じく、スタバなどチェーン店対個人のカフェという構造があるはずなのだが、そこはスルー。そういう映画ではないのだ。当時のアメリカでは、現在の日本と同じくらいの感じでスタバがあった。日本上陸は、1997年なので、当時の日本の観客は、スタバを最先端の店と思って観ていた。

 

スタバのマークも、よく見ると現在のとは違っている。それを見つけるのも楽しい。

これはどっちでしょう?

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答え:今の(2011年~)

出典:【知ってた?】スターバックスの人魚がだんだんと近づいてきている… | エンタメウス

日本のドラマ

山田太一脚本のテレビドラマ「今はバラ色が好き」(1977年松竹・よみうりテレビ)も、似たようなお話。個人商店を切り盛りする女主人公(松坂慶子)と、大手スーパーマーケットの店長(近藤正臣)の恋愛ドラマ。ビジネスでは敵対する2人だが、いつしか惹かれ合って、という。松坂慶子が、がんこな父とともに、小さな店を守るけなげな女主人公を演じる。こういうお話、いいですよね。恋愛ドラマには、ハードルが必要。「ロミオとジュリエット」の昔からの定番だ。

今はバラ色が好き - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇

 

当時は、商店街に大規模店舗ができると、米国も日本も反対運動が起きたのだ。今は、スーパーマーケット、特に総合スーパーであるGMSの閉店、撤退が頻発し、それに対して商店街が残留をお願いする、という逆の状況になっている。

他の映画ブログのちょっとした勘違い

他の方のブログにちょっとした勘違いがあったので、念のため2点ほど。

主人公キャスリーン(メグ・ライアン)のスタッフのおばあさんは、キャスリーンの母ではない。母は亡くなっている。

キャスリーンが待ちぼうけを食らわされるカフェはスタバではない。有名店の「Cafe Lalo」である。 スタバは何度も出てくるが。

 

感想

私はこの映画がとても好きだ。メグ・ライアンが一番輝いていた時でもあるし。

秀作かどうかは、結末を知っていても何度でも楽しめるかどうか、ということだと思うが、この映画を何度でも観てしまう。

それは、切り取られたニューヨークの街など、豊かな映像とともに、ちょっとした会話や表情など、細部で楽しめるからだ。店、室内、クリスマスのディスプレイなどなど、なにげないシーンも、とても丁寧に作り込まれている。それらが、ニューヨークという大都会の美しさ、都会生活の楽しさを余すところなく伝えているのだ。

もちろん、プロットもしっかりしている。主人公2人のビジネスでの対立と、プライベートで内面的な共感を使い分けているのだ。

 

こういうストーリーは、大体においてビジネス(戦争でもいいが)において勝つのは男性、ということになっている。戦争映画で出てくる女性兵士も、大体はその局面では負ける(弱い)側だ。できれば、逆の構造の物語を観てみたい。HPのフィオリーナや日本マクドナルドのカサノバみたいなやり手の女性経営者対、小さな店を守る男性のラブコメこそが21世紀的ではないだろうか。

 

(冒頭の画像はamazonより)