むのきらんBlog

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自由に考えよう

ベンツの「自動運転」の市販車はこんな感じ

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画像出典:GLC - メルセデス・ベンツ日本

 

メルセデスベンツから、Cクラスの新型SUVである「GLC」が発売されたので試乗しました。

一般道だけの試乗ですが、特に※自動運転機能をレポートします。現在の市販車でのほぼ最高レベルの「自動運転」と思われるのは、こんな感じです。

www.mercedes-benz.co.jp

 

  • 自動運転のレベル2に相当

冒頭に、※「自動運転機能」と書いたが、ベンツは「自動運転ではない」としている。Cクラス以上には、ディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付)が標準装備されている。これは、ブレーキ、アクセル、ステアリングという複数の機能の自動統合制御である。つまり自動運転の4段階の分類でいえば、「レベル2」の「複数の機能を同時に自動で行う」にあたる。

ベンツが「自動運転ではない」と強調するのは、運転者が通常時はよそ見をしていてもいいような完全自動運転(レベル3やレベル4)ではない、という意味だ。米国で、レベル2をレベル3以上と勘違いして、運転中に雑誌を読んだりして事故になる、という報道があるので、確かにここの認識は重要だ。

レベル2はあくまで、安全運転のサポート機能である、という基本を押させておく必要がある。

ディストロニックプラス|RADAR SAFETY|メルセデス・ベンツ日本公式サイト

自動運転車 - Wikipedia

 

※以下の記述で、「他車」と記載しているのは、私が比較試乗した、VOLVO(V40)、ワーゲン(パサート)、レクサス(NX)、スバルのアイサイトver.3搭載車である。

 

  • GLCのいいところ

前述のとおりCクラス以上には、ディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付)が標準装備されている。

追従走行の対象とする相手の認識が素晴らしい。追従していた目の前の車が、右左折などした場合、すぐに追従すべき別の車を認識する。

 

また、追従走行でなく、オートクルーズ状態で走っていて、100メートルほど先に信号待ちの車がいた場合、それをきちんと追従すべき相手と認識して、しっかり停止する。他車ではそれがなかった。近距離と長距離を分担する2種類のレーダーセンサーを搭載していることで、それが可能になっているのだろう。

 

なお、「両手を10秒以上離すと解除の警告音。その後5秒で追従解除。」とのことだが、たとえ指一本でもハンドルに手を添えておけば、追従走行をしてくれる。つねに両手をしっかりにぎっていなければいけない、というわけではない。もしそうだったら、のろのろ渋滞時など肩が凝ってしまう。(もちろん、いつでも対処できるように両手でハンドルを持っていることは基本だ。) 

 

360度ビュー機能もよい。見切りが悪いが、レーダーとカメラの機能で、見切りの悪さを十分カバーする。

 

  • GLCの残念なところ

ブレーキのタイミングが私は遅いと感じた。追従機能で自動停止するのかどうか、いささか不安になる。追従機能のサインはインパネに表示されるのだが、運転者の手動(足動)操作よりも先に減速するような味付けだったらよかったのに、その逆だ。他車のほうがそのあたりは、早めに効く。

 

車間距離を調整できる機能も、一般道ではあまり効かない。停止の際に「カックン」となる。他社の車では、停止の際にふんわりとショックなく停止する。

 

ステアリングアシストは弱い。中速域では効いているかどうかあまり体感できないレベルだった。ないよりまし、という程度だ。高速ならば体感できるのかもしれないが。

 

前車が停止し、自車も停止した後の、再発車の際、レバーかアクセルのいずれかの操作が必要である。この操作の要否は、考え方の違いだろう。私は、わずらわしいと思う。

前述のとおりベンツは「自動運転ではない」ことを強調しているので、まあ仕方がない。

 

駐車サポート機能は、期待したほど使えない。2台の車の間に駐める場合のみ機能する。駐車の際に 、両側が一杯というケースとそうでないケースは、場所によるだろうが、平均すれば、せいぜい半分以下ではないだろうか。

混み合った駐車場では確かに重宝するかもしれないが、運転に慣れた人よりも下手で、何度も切り返しをするレベルだ。回りからイライラ光線をもらいそうな気がする。

白線も認識してもらいたいものだ。

 

  • ベンツの姿勢とデザインに疑問

ディストロニック・プラスなどの安全装備が、クラスによって異なる。ボルボなどは、全車に装着している。安全を「クラス」によって分ける、という姿勢は企業姿勢として好ましくない。

考えてみると、ベンツの「クラス」という表現はまさに、「車格」を意味している。私は「車格」というのが好きではない。ベンツ全体のブランドという単位での「品格」が重要だと思うのだ。その点は、ボルボを評価する。

 

デザインも残念だ。ここは個人の好みの世界になるが。

一昔前のベンツのデザインのほうが、すっきりしていて、大人を感じさせた。現在のデザインは、「思い上がった攻撃的な顔」というメッセージを意図しているように感じる。

現在、ベンツが伸びている市場は、中国などの新興国だ。新興国での成功者の心象風景に沿ったデザインとしているのだろう。

残念ながら、「成熟」「安心」「気品」「高質」といったメッセージは受けない。

 

  • サイズはジャストとは言いにくい

個人の環境によるだろうが、私としては、「日本にジャストサイズ」というベンツの主張を鵜呑みにできない。特に1890㎜の横幅は、広すぎる。日本の道は1800㎜以上の車には向いていない。一般の道は、4m幅が最低基準だが、まだまだ実態は3.6m幅(戦前の尺度基準である「2間(にけん)」)なのだ。また駐車スペースでも、いまだ厳しいところが多い。

もちろん、パレット式立体駐車場の多くは、このサイズでは難しい。 

 

  • そもそも「日本向け」は幻想

そもそも、日本は最早マイナー市場であるので、これは仕方のないことではある。

2015年のベンツの世界販売は187万台。内、中国は37万台に対し日本は6万台。日本の輸入車NO1と言っても、世界販売の3%ほどでしかない。

http://www.mercedes-benz.jp/news/release/2016/20160122_1.pdf

もちろん、これはベンツに限ったことではない。明確な「日本向け」車は軽自動車だけと言っていいのが現実なのだ。だからフォードも日本市場から撤退するわけだ。

したがって、「日本向け」はそもそもありえず、日本のお客様もどうぞ、ということなのだ。(とはいえ、1億人以上の分厚い中上級層が高密度で暮らす日本は、量的成長は見込めないが、安定した良質な市場とはいえるが。)