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予想どおりの気楽に観られる戦争映画である。戦闘前の兵士の日常生活もスピーディに描かれ、即お楽しみの緊迫した戦闘シーンの連続である。物語の大筋も、個々の兵士のサイドストーリーも、お約束どおりで安心して楽しめる。
「敵」は、人類ではないサイボーグ的なエイリアンなので、敵の人権は無用であるし。
以下、映画の興趣を減らさない程度の若干のネタバレがありますが、批評とTIPSを。
(目次)
- なぜ少尉と軍曹が決死隊に選ばれたか?
- なぜ主人公は2級軍曹か?
- なぜ侵略者が弱すぎるのか?
- 侵略者は、近未来の米軍ではないか?
- ラブシーンはないのか?
- 救出は、民間人より負傷者が先なのか?
- 自爆は米軍映画でもお約束か?
- 撃ちまくるのはリアルか?
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なぜ少尉と軍曹が決死隊に選ばれたか?
海兵隊の小隊に、防衛戦を越えて敵の領域に侵入し、取り残された民間人を救出せよという特別任務が与えられる。小隊の指揮官の少尉と軍曹は、なぜこの2人となったのか。
少尉は「士官学校を最優秀で卒業して初めての小隊長勤務」となっている。海兵隊に独自の士官学校はないので、アナポリスの海軍兵学校だろう。
それと、退役が承認されたロートル2級軍曹が、取り残された民間人救出の特別任務に向かう。
特別任務であれば、これほど不都合な組み合わせはない。おそらく、数名の民間人救出は、この状況では全体の中での優先順位が低い。なので使い物にならない新任小隊長に、退役予定のベテランをあてがっておこう、ということだろう。2人とも、「ロサンゼルス防衛戦」にとっては、なくてはならない手駒ではない、というのが上官の判断だろう。
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なぜ主人公は2級軍曹か?
主人公は、2級軍曹(スタッフサージェント)。20年の軍歴ということになっているので、高卒18歳で入隊したとして38歳。戦場も経験しているので、優秀であれば、曹長にはなっていると思う。2級軍曹ということは、平均的もしくは平均以下の評価ということだろう。それにしては素晴らしい活躍をするのだが、もともとヒーローではない、というのがいいところだ。
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なぜ侵略者が弱すぎるのか?
米軍を全滅させるくらい強いエイリアンだが、後半はどんどん弱くなってくる。一応、「急所を見つけた」ということで急所を狙った攻撃で効率が高まったという説明だろうが、それも無理筋。「急所」が特に驚くような場所ではないので、急所を知らなくても、同じところを狙うだろう、という程度のこと。また、無人飛行体(ドローン)も、携行ロケット砲で簡単に撃墜できる。これなら(小隊以外の)米軍部隊が全滅するはずがない。
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侵略者は、近未来の米軍ではないか?
宇宙からの侵略者が、これほど弱いことはありえないだろう。人類を駆逐するならば、核爆弾などの大量破壊兵器で一発だろうし。
侵略者は、ドローンを駆使し、歩兵も、ロボットを同行させている。とすれば、侵略者の設定に一番近いのは、近未来の米海兵隊、というところだろう。
つまり、現代(2011年)の海兵隊対2025年頃の海兵隊の戦闘、という感じである。なので、侵略者も味方が撃たれると負傷者の救出にいそしんだりするわけだ。
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ラブシーンはないのか?
近頃のアメリカ映画でやや顕著だが、ラブシーンがない。ここは好感度が高い。生死をかけた戦いの最中に、ラブシーンはほぼありえない。民間人の獣医と、空軍情報兵の2人の女性が合流する。なかなかいいムードであるが、軍曹たちとのラブシーンにしないのは見ていて気持がいい。銃は撃てるかと問われた時の、空軍情報兵のセリフ「この美貌で生き残ってきたと思う?」がいい。
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救出は、民間人より負傷者が先なのか?
これは米軍のルールなのだろうか。小隊に与えられたミッションは、民間人の救出である。であれば、救出用ヘリに乗せるのは民間人が先に思える。しかし、負傷兵を先にしヘリは飛び立った。作戦目的の民間人は後回しとなった。
ここは、要研究のところである。米軍のマニュアルには当然に記載されていると思うが。米軍(米兵)万歳、米軍は民間人を見捨てない、という米軍全面協力のプロパガンダ映画であるのに、このシーンということは、これが米軍のルールと思われる。
とはいえ、作戦遂行より負傷兵救出が先というのは、非常に違和感がある。
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自爆は米軍映画でもお約束か?
自爆攻撃というと、旧日本軍の特攻や、イスラム過激派の自爆テロがイメージされる。しかし、米軍の映画でもどうやらお約束のようだ。より大きな目的のために、自らを犠牲にする、というシーンは、ほぼ必ずある。もちろん、戦争における「日常的」な行為としてではなく、「戦争という日常」の中の、極めて非日常的な極限的な行為、英雄的行為として描かれるのだが。違いがあるとしたらその点だけだ。
そもそも、戦闘においては、自らの生命を危険にさらして任務に殉じることが求められる。それは米軍も含め、世界の軍隊で同じだ。指揮官の役割は、それを動機づけ、命じることで、実行させることだ。
したがって、自爆攻撃は、戦争の究極の姿ではあるが、決して戦争の中の、きわめて特異なものではない、ということだ。
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撃ちまくるのはリアルか?
「リアル」と呼ばれる戦争映画で、「弾薬問題」について真にリアルに描かれた映画を観たことがない。残念ながら、この映画もそうだった。
銃器マニア、戦争映画ファンにとって、重要なポイントではないだろうか。撃ちまくっる描写は、まるで何度でもセックスが可能なマッチョヒーローみたいなものだ。
兵士が使っているM16A4自動小銃の30発用のマガジンでも、連射ならば、毎分900発なので、2秒で撃ち尽くす。少尉や軍曹のM4A1カービンもほぼ同様だ。予備マガジンを6ケース携行、背嚢にも6ケースだとして、小銃分も入れて13ケース。つまり26秒分だ。映画では、どうみても数分間は撃っている。(空爆までの3時間の作戦行動の予定なので、おそらく7ケースの携行だろうし。)
一般に常用される3点バースト(一度引き金を引くと、3発発射)でも10回の速射でマガジン交換だ。3点バーストは、一発しか撃っていないように聞こえるくらいの速射である。この3点バーストならば、まだリアリティがあるが、映画では、連射しているように見えるので、あっという間に弾切れになってしまうはず。なにせ、ちょっと撃たれただけでは倒れないエイリアン兵士なのだ。
と、いうことでいろいろ考えどころはありますが、頭をからっぽにして観るには、楽しめる映画です。