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ほとんど知られてない分譲マンションの5つの「欠陥」~くい打ち偽装なんかじゃない。全てのマンションで知っておくべきこと~

三井不動産のマンションのくい打ち問題が昨年騒がれました。しかし、あれは実は大した話しではありません。(住人の不安を除けばね。)

 

物理的品質としては、日本のマンションの99%は一応の及第点だと思います。

実は、ほとんど知られていない、より本質的な5つの「欠陥」があるんです。分譲マンションを買おうかな、って人には、そこをしっかり認識した上で、冷静に判断してほしい。


(c) .foto project

(写真はイメージです。本文とは関係ありません。) 

 

(目次)

 

1.「分譲マンションの本質は共有物」というリスクへの無知。

分譲マンションを購入するということは、見知らぬ他人、自分の常識と異なる人、かなり常識がない人と、自分の財産をシェアするってことです。いつどんな人が隣に来るかわからない。賃貸と違って、おいそれとは逃げられない。出て行こうと思ったら、叩き売るしかない。自分がババを引いたと思った物件です。高く売り抜けるという発想は無理があります。

つまり、ウーバとかAirbnbみたいなシェアリングエコノミーが是か非か、なんていうレベルじゃないわけ。

 

実はマンションは法律的には、基本的に「共有物」ということになります。その場合、たとえば取り壊して売却するみたいな、重大な「変更」には、一部の例外を除き、原則として全員の賛成がいることになっています。

それではあんまりだ、というので、「区分所有法」という法律で、「専有部分」つまり各住居は自由に売買できたり、次に説明する建て替えは全員の賛成でなくてもいいようになっているのです。

区分所有の方は比較的よく知られていますが、これはある種の特別なルールであり、「分譲マンションは原則的には共有物である」という基本のほうは、ほとんど知られていません。業者もそこはわかっていない人が多いので、きちんと説明されることは稀です。知らない人と数千万円も出して、全体で数億円から数百億円の財産を共有するのだ、と正しく説明されたら、ちょっと引いちゃいますしね。

マンションのチラシをよく見てみると、小さい字でびっしり書いてある部分があります。その中に「分譲後の権利形態」という欄があり、「建物は区分所有権、土地は共有」とか「敷地は専有面積割合による定期借地権の準共有、建物は専有部分は区分所有権、共用部分は専有面積割合による所有権の共有」などと書いてあります。実はここが重要なのです。

 

実際、建て替えは次に説明するように非常にハードルが高いのです。老朽化が著しいマンションは、メンテナンスが悪いことも原因。つまり管理組合が十分機能していないわけ。そういうマンションの自分の部屋を売ろうとしても高く売れません。むしろ、取り壊して更地にして土地として売った方がいい、というようなこともありえます。ところが、いざ取り壊して更地にして売ろう、とすると、前述のように全員の同意が不可欠。なので、泣く泣く安値で自分の居室を売り払うしかないわけです。

このことは、他にも、たとえば管理費を滞納した人への債権が回収不能になり、債権放棄をしようとした場合などにも首を出すのです。普段はほとんど意識しないで暮らすことができますが、いざ問題がでたときに、この「基本の基本」が出てくるのです。

 

2.制度的リスクを欠陥レベルにしている法制度。

建て替えには、なんと8割の賛成がいる。つまり建て替えなどの重大な変更が非常に困難。しかも、その8割というのは、所有者の8割と戸数別や床面積など議決権の8割の両方が必要です。

つまり基本的には、建て替えはできないと思ったほうがいい。建て替えをしようとすると、10年がかりで腰を据えて、労力をかけて、反対派を説得して、総会などの手続きを踏むことを覚悟する必要があります。

それよりは、建て替えの必要性を感じるほど、いろいろ支障があるのであれば、安くても売って、他に転居したほうが、労力と精神衛生上の両面で早道です。

 

3.機械式駐車場という、重荷にしかならない欺瞞的装置。

駐車場の収入は、新築当初は、管理組合財政を潤す収入源なんだけど、やがて利用者が減っていきます。一方、点検や修繕のコストはどんどん重くなっちゃう困りもの。しかも、ゲリラ豪雨が降れば、クルマが水没しちゃうわけ。取り壊そうにもお金がかかるし。

なので、機械式駐車場のマンションは止めといたほうがいいけど、ほとんどが機械式ですね。

 

4.「子育て時代」にしかマッチしていない仕様。

人生100年時代に、そのごく一部にだけフォーカスしている施設。そういう意味では、いわば老人ホームと同じ。バリアだらけだし、大規模マンションだと、ゴミ置き場にいくにも一仕事。とてもとても永住できるようなものではありません。

高齢者向けの住宅や施設には、高齢者向けマンションやサービス付高齢者住宅、そしてもちろん老人ホームなどがありますが、それらの存在は、裏を返せば、分譲マンションが一生暮らすように出来ていないことの証明でもあります。ローンは35年ローンとか、半生をかけて返すようにできているのにもかかわらず、です。

マンションの販売業者は夢を売るのが商売。なので、主力購買層の「今のニーズ」にフォーカスして仕様を決めて、売れればつぎのプロジェクトに移ります。ところが、購入者はそこに残り、暮らしていくわけ。

マンションを買うとき、ローンを組むときは、当然元気でピンピンしています。しかし人は、やがて老いていくわけです。その時にそのマンションで幸せに暮らすことができるか、考えておく必要があるでしょう。

 

5.「住宅」専用という旧式の発想。

暮らしには、住む以外に、働く、学ぶ、遊ぶ、などなどいろんな要素がある。分譲マンションはまるで単機能の「住宅工場」。これではつまりません。もっといろいろできて楽しいものがいいのではないでしょうか。これは「欠陥」というと言い過ぎでしょう。しかし、このような視点で、「暮らし」というもの、「住まい」というものを考え直してもいいのではないでしょうか。

  

  • 分譲マンションは複合「欠陥」

これらの問題は、複合「欠陥」なのです。上の3,4,5を、購入後になんとかしようと思っても、1と2の法律が壁になっちゃう、みたいなね。そこが難しいところです。

これが分譲ではなく、賃貸マンションであれば、入居者は自分の生活スタイルが変わったり、ニーズに合わなければ身軽に移っていきます。オーナーも、時代のニーズに合わせて、仕様を変えること(コンバージョン、リノベーションと言います)が比較的簡単にできるのですが。分譲は多数の所有者がいるがゆえに、後から変更することが難しいのです。

 

今日は分譲マンションの本質的「欠陥」だけ並べました。もちろん、いいところもあるのですが、それは皆さんご存じのはずですね。いいところと問題点の両方を直視して、合理的に考えましょう。それが、将来「こんなはずじゃなかった」と悔やむリスクを軽減する道です。

 

  • そもそもこれらは欠陥なのか

今回はあえて、「欠陥」という強い表現を使いましたが、もちろん「欠陥」の定義は「本来備わっていなければいけないものが備わっていない状態」です。なので「性質」と呼ぶのがフェアかもしません。煽る意図はありません。今回は、あえて警鐘を鳴らす意味で、括弧書きで「欠陥」と表現しました。要は「そんなつもりじゃなかった」となるかどうかがポイントです。つまりこれらを分かった上で、それでも分譲マンションを買う方にとっては、これらは欠陥ではなくなるわけです。 

 

実はこれらの「欠陥」には、国や業者も気がついて、ちょこっとづつ手を打ち始めてはいます。たとえば、建て替え要件の緩和をしようとかね。しかし、残念ながら、その動きは、反発もあるのではるかにスロー。なので昭和の発想の分譲マンションが今日も新築大売り出し中です。

 

  • 戸建て住宅でも

なお、これらの「欠陥」と似た面は戸建て住宅についても、当てはまるところがあります。住宅の仕様が、余りに短期的視点で作られていること。子育てが終ると、多くの部屋は無駄になります。年を取ると、2階には行けなくなります。分譲住宅団地の問題とか。などなど。まあ、それはまた別の機会にね。

 

ちなみに、以下の記事はマンションの建築上の欠陥について述べています。

それはそれで、知らないよりは知っていたほうがいいのですが。あんまりそちらを心配しすぎるよりは、もっと基本的なことを押さえたおいたほうがいいと思います。

 

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