むのきらんBlog

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蓮舫議員の二重国籍問題は勘違い多発

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民進党の代表候補の蓮舫議員について、二重国籍ではないか、という議論が活発に行われています。

どうも、議論が脱線気味なので、ここできちんと整理します。

 

2016.9.15追記

その後の報道やご指摘がありましたので、最新情報に基づきそれらを次のエントリーで整理、訂正しました。

報道では、「蓮舫議員は二重国籍だった」ので「改めて外国籍放棄の手続きをしている」とのことです。

本エントリーは、経緯を明確にするために、そのまま残しておきます。

www.munokilan.com

 

2016.9.17追記

本件、国籍選択をしたのかどうかがあいまいの状況です。それについて、整理したエントリーを書きました。

www.munokilan.com

 

 

 

(蓮舫疑惑のまとめ)

1.蓮舫疑惑は「外国籍を放棄していないのではないか」というもの。

2.日本の制度上は、日本国籍の選択と外国籍の放棄宣言が一緒に行われる。

3.ただし、(当該国で)外国国籍を喪失していない場合は、外国国籍の離脱の努力が課される。蓮舫氏は、以前したつもりだが、念のため再度手続きしたと言っている。

 

(目次)

問題提起側の主張

議員では、足立康史衆院議員が盛んに本件を問題視していますが、足立氏が論拠とするのは、以下の八幡 和郎氏のエントリー。

agora-web.jp

要点を引用します。(太字筆者)

蓮舫の父親は台湾出身の貿易商・謝哲信で、母親は資生堂の美容部員だった日本人の斉藤桂子で、日本生まれだ(現在は新宿でスナック経営)。

当時の国籍法では、父親の単独国籍となったうえで希望すれば帰化することになっていたので、中華民国籍の謝蓮舫として育った。

ところが1984(昭和59年)5月25日に国籍法が改正され、85年1月1日から施行されて、蓮舫のように母親が日本人だと、日本国籍を与えられて、22歳までに選択できることになった。

そこで、どの時点かは不明だが、蓮舫は日本国籍を選択する手続きを法務局にしたようだ。

ただ、この選択の時には、もう一方の国籍を放棄するように努めるようにと法律でされて、窓口ですみやかに手続きを取るように指導されるが、確認はされないのである。

八幡氏は、太字部分をもって、「二重国籍疑惑」を主張しています。

 

蓮舫氏の言い分 

 

蓮舫氏のフェイスブックより全文引用(太字は筆者) 

蓮舫 9月8日 17:42 ·

私は日本人です。
日本で生まれ、日本で育ち、日本の風土で育てられ、日本で結婚し双子を育ててきています。
そして、我が国のために働きたいと国会議員として仕事をしています。日本を良くするために、まだまだ努力をしようと強く思っています。
私は、生まれたときから日本人だという気持ちが強いのですが、法律的には、女子差別撤廃条約の締結を目前にして改正国籍法が施行(昭和60年1月1日)された直後の昭和60年1月21日、日本国籍を取得しました。17歳のときでした。
日本法の下で適正な手続きを行い、国籍の届出を行いました。私は、日本人です。
私が台湾法において、籍があるのかというご指摘がありました。
高校生の時、父親と台湾の駐日代表処に赴き、台湾籍放棄の手続きを行ったという記憶があります。私は、台湾籍を放棄して今日に至っているという認識です。
この点について、今般、確認を行いましたが、いかんせん30年前のことでもあり、今のところ、確認できていません。
今後も確認作業は行いたいと思いますが、念のため、台湾の駐日代表処に対し、台湾籍を放棄する書類を提出しました。
この間、大好きな父が否定されるかのような。また、最愛の娘と息子にまで言及する 書き込みに触れました。家族が本人に責任のない中傷誹謗にあうのは母として耐えられませんでした。
日本の法律では、私が日本国籍しか持っていないことは明らかになっていますが、台湾法での問題について、ご心配をおかけしたことをお詫びいたします。

 

あちこちに「放棄」という言葉が出てくるので、ちょっとわかりにくいですね。国籍法では、「放棄」(放棄の宣言)と「離脱」や「喪失」を分けています。 

法務省:国籍法

 

また、蓮舫氏自身が、過去のインタビューその他で、「帰化」という言葉を使ったり、また、「いいとこどり」な言い方をしていたことはあります。その点、蓮舫氏は、政治家を志した時点で、きちんとすべきでした。

とはいえ、蓮舫氏の言い分は、国籍法に則っていると理解できます。

 

混乱を呼ぶ勘違い

混乱のもととなる、よくある勘違いは、3つあります。

1.「蓮舫氏が日本の法律の元でも、外国籍を放棄していない」というもの。

2.「蓮舫氏が帰化人」というもの。

3.「蓮舫氏の外国籍は、中華人民共和国の法律に基づいて判断される」というもの。

 

勘違いその1「蓮舫氏が日本の法律の元でも、外国籍を放棄していない」

国籍選択の届け出は、国籍法14条の2で「日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。」となっています。

なので、外国の国籍を放棄する旨の宣言をしたことで、通常の国内的には「外国の国籍を放棄した人」として扱われます。

法務省:国籍Q&A

 

したがって冒頭の八幡氏の主張する「二重国籍疑惑」は、国籍選択手続きと一体のである外国籍の放棄の宣言をしたことには全く触れずに、疑惑を強調しており、不適切です。八幡氏のエントリーだけを読めば、あたかも外国籍の放棄をしたかどうか不明、というように読めてしまうのです。

 

勘違いその2「蓮舫氏が帰化人」

これは、全く対象が異なります。

 法務省:国籍Q&A Q8より引用

 帰化とは,その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して,国家が許可を与えることによって,その国の国籍を与える制度です。日本では,帰化の許可は,法務大臣の権限とされています(国籍法第4条)。

蓮舫氏の場合は、帰化ではなく「国籍の選択」手続きの対象なのです。生まれたあとで、法律が改正されたのです。そこは上の八幡氏エントリーの引用部のとおり。

なお、蓮舫氏自身も過去に「帰化した」みたいなことを言ったようですが、それは間違いです。

 

勘違いその3「蓮舫氏の外国籍は、中華人民共和国の法律に基づいて判断される」

蓮舫氏擁護派(?)も勘違いをしています。たとえば、清 義明氏のエントリー。 

blogos.com

以下引用(太字筆者) 

(1)日本の国籍法により、蓮舫議員は日本国籍を取得したと同時に国籍離脱をしなければならなかった。

(2)その離脱しなければならない国籍は、台湾(中華民国)ではなく、中華人民共和国である。

(3)日本は台湾を国家として認めていないため台湾人に対する国籍取り扱いは中国のものがベースになる。

(4)中国国籍法第9条には「外国に定住した中国公民が、自らの意思によって外国国籍に加入あるいは取得した場合、中国国籍を自動的に喪失するとある」

(5)従って、自動的に蓮舫議員は二重国籍状態を解消している。

 

この勘違いの理由は、共同通信の報道にあるようです。 蓮舫批判者の八幡氏が、冷静に指摘しています。

agora-web.jp

 

法務省のHPには本件は記載されていませんが、たとえば在留外国人に交付される「在留カード」については、 国籍地域欄は「台湾」です。台湾籍の方は、中国(大陸)籍とは別に扱われています。この「国籍地域欄」という表現が、きわめて微妙ではありますが。

日本の在留カード、台湾人の国籍地域欄が従来の「中国」から「台湾」と表記へ : 報道と台湾正名運動 | 一般社団法人 アジア自由民主連帯協議会

 

日本が、台湾(中華民国)を国家承認していない(国家承認を取り消した)ことは事実です。それと、個人を律する法律は別問題です。清義明氏は、共同通信の報道を鵜呑みにしたために、それを混同し、台湾の人も日本は大陸の法律で判断する、という誤解をしたようです。

 

以上の3点のよくある勘違いを除いて考えると、冒頭のまとめのとおり、蓮舫氏の言い分は、国籍法に則ったものであり、日本の法的には問題とは言えないでしょう。あえていえば、外国籍離脱の努力義務の履行の程度の問題ですが、努力を全くしていない、という反証がなされない限り、法的に問題になるものではないと思われます。

 

当該国の国籍離脱(国籍喪失)要件の議論が残る

そうなると残る問題は何でしょうか。

足立議員のエントリーより引用します(太字筆者) 

レベルが低すぎる蓮舫氏の言い訳 -民進党は戸籍謄本の提出を求めるべき-

実際、外務省は、外務公務員法第7条「外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない」を厳格に運用しており、採用予定の者が外国籍を有する場合には、当該国による離脱証明書にとどまらず、証明書を市町村に届けさせ、外国籍離脱の事実を記した戸籍謄本の提出まで求めているのだそうです。

蓮舫氏が本当に野党第一党の党首として総理大臣を目指すのであれば、少なくとも代表選挙の投票日である今月15日までに台湾当局からの離脱証明書を市町村に届け出て、離脱の事実が明記された戸籍謄本を民進党本部に提出すべきだし、民進党本部は蓮舫候補に戸籍謄本の提出を求めるべきであると存じます。

それから、既に日本維新の会の馬場幹事長が表明している通り、私たちは党として、原則として国家公務員と国会議員については、外務公務員と同様の欠格事由を課するべきと考えています。今回の騒動を奇禍として、国益に係る重大な立法事実が明らかになったのですから、迅速な立法は当然と考えています。

これはなかなか厳しい姿勢です。これは国籍法の議論というよりも、国会議員、とりわけ首相を目指すものの責務として、一般国民よりも厳しい条件を課すべき、ということです。一理はあるのですが、現実に国によっては、国籍離脱を認めない国もあります。外務公務員はともかく、国会議員については、こういう規定を設けるのは厳格すぎるのではないでしょうか。

 

私は、現行法の範囲でよかろう、と考えています。つまり国籍の選択と外国籍放棄の宣言を行うことで、「日本国籍の単一保有意思がある者」として扱う、ということです。

その政治家が、日本の国益を第一と考えるか、それとも他国の国益を第一と考えるか、それは選挙民が判断すればいいことでしょう。

 

論点は分けて考えよう

議論が脱線するのは、国籍をめぐる蓮舫氏のこれまでの説明があいまいだった点もありますが、そもそも外国系日本人(変な表現ですが)を良しとしない考え方があると思います。少なくとも、国会議員として国政に関与させることに反対、という見方です。また、蓮舫氏や民進党が気に食わない、という人たちもいます。

それらはそれで主張としては尊重せねばなりません。

しかし、そのことと蓮舫氏の「二重国籍」問題は分けて考えるべきでしょう。

 

なお、私は政治的には全体として民進党も蓮舫氏も支持していません。