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蓮舫氏の国籍問題についての超基本QA~アゴラ池田氏を鵜呑みにする前にチェックしておきたいこと~

 蓮舫氏の二重国籍問題について、いろんな意見が飛び交ってますが、基本的な誤解に基づく意見もあちこちで見られます。ベーシックなところをおさらいしておきたいと思います。

そうすると、アゴラの池田信夫氏の主張の是非も正確に判断できます。

 

agora-web.jp

 

(目次)

 

二重国籍問題とは

蓮舫氏が、台湾籍を意図的に保持していて、つまり意図的に日本と台湾の二重国籍を続けていたのではないか、という問題。

 

日本の法律ではざっくりどうなっているか

日本の法律(国籍法)は、基本的には、単一国籍を望ましいものとしている。なので、帰化の場合は、外国籍から離脱することが基本的な条件の一つになっている。重国籍の場合は、どちらか選択せよ、ということになっている。

(「帰化」という言葉は、広くいろいろ使われますが、国籍法上の帰化のこと。蓮舫氏は国籍法上は帰化ではない。) 

 

関連する法律問題は他にもこんなもの

一番基本的な、国籍法の他に、戸籍法、公職選挙法、旅券法にそれぞれ違反しているのではないか、という議論があります。

本エントリーでは、国籍法のみ扱います。

 

焦点は国籍選択

蓮舫氏の場合は、日本国籍を持っていることは疑いがない。(持っていないと選挙に立候補できない。 )なので、焦点は、日本国籍のみを選ぶという「国籍選択」をしたかどうか、ということになる。

 

国籍選択とは

1985年施行の改正国籍法で定められた手続き。重国籍者は期限までにどちらかの国籍を選ばなければならない、というもの。そこで日本籍を選ぶ方法は2つ。

方法1:市町村に国籍選択&外国籍放棄の宣言をする。なお、外国籍を離脱する努力義務が定められており、離脱した場合は、市町村に外国籍喪失の旨を届け出ることになっている。

方法2:外国籍を離脱し、その証明書を発行してもらい、市町村に外国籍を喪失した旨の届け出をする。

 

蓮舫氏の時系列はどうか

 1967年 東京都で生まれる。父は台湾籍。母は日本籍。

当時の日本の国籍法では、母が日本籍では日本国籍を自動取得できない。一方台湾籍は取得できたので、その時点の国籍は台湾籍一本。 

 

1985年 改正国籍法施行。(蓮舫氏17歳)

母が日本籍でも、出生と同時に日本国籍を取得できることになった。

その経過措置で、蓮舫氏の場合は、法務局に届け出れば、日本国籍を取得できることになった。

蓮舫氏は、父と法務局に行った、としている。これは改正国籍法附則による国籍取得の届け出のためと推察される。

 

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画像は、国籍放棄問題の渦中にある蓮舫氏、単独インタビュー - Yahoo!ニュース

 

国籍選択をしたのか

それ以降、国籍選択をしたのかどうか、というのが問題。

蓮舫氏の場合、22歳まで、つまり1989年までに国籍選択をすることになっている。

しかし蓮舫氏の主張は二転三転し曖昧。国籍選択をしたとも、台湾籍離脱をしたとも言っている。しかし、最近の発言では、台湾籍は離脱されていないことが判明したので、台湾籍を離脱する手続きをして、それを区役所に届け出た旨発言している。

つまり、方法2は完了していなかったことを蓮舫氏は認めた。一方、方法1を実行したかどうかは、言明を避けている。

 

方法1、方法2とも、手続きをちゃんと完了すれば、戸籍謄本(抄本)にその旨記載される。したがって、この内容を公開すれば、本件は明らかになる。しかし、蓮舫氏は公開を避けている。

もちろん公開する法的義務はない。しかし、政治家としては、説明責任が不十分という批判は正当である。(「公開」といってもネットに原本をそのままさらす以外にも、一部墨塗りも可能。また、第三者が確かに内容を確認した、と証明し声明を出す方法もあるわけ。その「第三者」への信頼度の問題は残るものの。)

  

国籍選択の手続きをしなくても、国籍選択したものと見なす規定は該当するか

結論:該当しない。

理由:一定の場合に、そういう規定がある。しかし蓮舫氏の場合は当てはまらない。

解説:見なし規定とはこれ。

1985(昭和60)年1月1日前(改正国籍法の施行前)から重国籍となっている日本国民について。

1985年(昭和60)年1月1日時点で現在20歳未満の場合は、22歳に達するまでに国籍選択をすることになっている。しかし、期限までに国籍の選択をしないときは、その期限が到来した時に日本の国籍の選択の宣言をしたものとみなされる。

 

蓮舫氏の場合は、1985年1月1日前は、重国籍ではなく、台湾籍。改正の経過措置で、届け出をしてはじめて、その時点で日本国籍を取得。(これは、生まれた時にさかのぼって日本国籍を取得したこととする、ということではないので、要注意。)

したがって、この見なし規定の該当とはならない。

 

蓮舫氏は帰化か

答え:日本の法律にいうところの「帰化」ではない。

理由:蓮舫氏は、以下の「帰化」の定義には該当しない。

法務省:国籍Q&Aより

帰化とは,その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して,国家が許可を与えることによって,その国の国籍を与える制度です。日本では,帰化の許可は,法務大臣の権限とされています(国籍法第4条)。

母が日本人の蓮舫氏の場合は、国籍法改正の経過措置によって、期限までに「届け出」れば二本国籍を取得できることになった。 これはそもそも国籍法の根拠条文が異なる。また「届け出」であって「許可」ではない。

 

補足:ただし、一般的に日本国籍を後から取得することを「帰化」と呼ぶこともある。蓮舫氏の過去の発言も、また蓮舫氏を批判する側も、これをごっちゃにしていることが多々ある。

 

 アゴラの池田信夫氏の主張は正しいか

agora-web.jp

ここで冒頭の問いに戻ります。

アゴラの池田信夫氏の主張は正しいか?

答え:大筋は正しいが、推測を断定しており、飛ばしすぎ。池田氏は、蓮舫氏は方法1の国籍選択を行っていないと断定しているが、それは推論にとどまり、物証がない。(とはいえ、私もそうではないか、という心証が強くなってます。)

 

なお、今回は、公職選挙法、旅券法の問題には踏み込みません。

 

 

(蓮舫氏および関連する主張など)

アゴラ 言論プラットフォーム 八幡和郎氏と池田信夫氏が蓮舫氏国籍問題の主砲

蓮舫 | れんほう 参議院議員 蓮舫氏の公式サイト プロフィール欄に経歴表示あり 

蓮舫 - Wikipedia 生年月日や両親、婚姻等のベーシックデータとして

国籍放棄問題の渦中にある蓮舫氏、単独インタビュー - Yahoo!ニュース 国籍取得を示す画像の元画像など

蓮舫氏のフェイスブックページ 過去ログには、本件についての発表骨子等が記載

 

 

(台湾の取り扱い)

蓮舫氏には台湾の国籍法が適用される – アゴラ 大陸(中共)法が適用されるという誤解を解く

蓮舫二重国籍についての法務省見解はこうだ(増補あり) – アゴラ 台湾の国籍法上の取り扱いは明示されていない

台湾政府の許可証受理せず=蓮舫氏の手続き不備か-金田法相:時事ドットコム 

 

 

(蓮舫氏国籍問題についてのベーシックな関連サイト)

法務省:国籍Q&A 国籍取得、帰化、国籍選択などの基本として

法務省:国籍法

国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律 蓮舫氏の場合は、これが該当するのでややこしいのです。

法務省:国籍選択について 国籍選択したものと見なす規定の整理もあって、わかりやすい。(なお、蓮舫氏の場合は、みなし規定に該当しません。)

戸籍法

日弁連 国籍選択制度に関する意見書 国籍選択制度の立法過程と催告等の運用状況の資料として。