シリアに取材に行ったジャーナリストの安田さんがテロリストに拘束され、身代金を要求されている。(らしい)
で、これに対して、佐々木伸氏が日本政府は身代金を払え、と主張してます。
後藤さんのときも、同じような意見が結構でましたね。
で、今回は、テロリストの視点で考えてみます。テロリストにとっておいしいお客は誰でしょう?って話し。
画像はhttp://blogos.com/blogger/WEDGE_Infinity/article/より。
(目次)
より、佐々木伸氏の主張を引用します。
昨年6月、シリアで取材中に行方不明になったジャーナリスト安田純平さん(42)と見られる画像がネット上に新たに公開された。岸田文雄外相ら政府高官は安田さんと見られるとしており、本人であることは間違いないようだ。今回は政府が水面下の裏交渉に踏み切れば、「救出は可能」(テロ専門家)と見られており、安倍晋三政権の高度の政治判断を求めたい。
で。
この画像をシリアで受け取ったというシリア人支援組織によると、拘束しているのは国際テロ組織アルカイダ系の過激派「ヌスラ戦線」。「ヌスラ戦線」との“仲介役”と自称するこの支援組織の代表は、日本政府が「1カ月以内」に交渉などの行動を始めなければ、安田さんの身柄は外国人人質を惨殺してきた過激派組織「イスラム国」(IS)に渡るだろう、としている。
「ヌスラ戦線」は日本政府に対して1000万ドルともいわれる身代金を要求しているとされ、3月には日本政府に対応を求める安田さんの動画が公表されたが、テロリストの要求には屈しない、と主張している政府はこれまで、交渉を真剣に検討してこなかった。
とのこと。
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高度の政治判断とは
ここは「高度の政治判断」で、「金銭などで裏交渉しない」、とすべきでしょう。
佐々木氏はこう述べています。
特に身代金の扱いについては、先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言に「テロ組織には身代金を支払わない」と明記し、日本は議長国として宣言を順守する立場にあるのも事実だ。
これをスペインなど他国がやってるから、日本も裏交渉でやっていいじゃん、というのは、サミットの意味を議長国日本が完全に裏切ることです。
サミットは、単なる大国のクラブではありません。「普遍的価値を共有するクラブ」でなければならないわけ。でなければ、世界を道義的にリードできません。(サミットに入ってない)ロシアや中国などと同類になってしまうわけ。
目先の利益につられることは「高度の政治的判断」ではありません。長期的、大局的な物事の軽重を見極めた判断なのです。
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身代金を払えばジャーナリストは安全か
そもそも、佐々木氏は、 「紛争地の実態は、安田さんのようなジャーナリストの存在がなければ分からないことも多い。」 (だからジャーナリストの命を、日本政府はお金で買うべきだ)としている。 では佐々木氏に尋ねたい。身代金を払うことは、かれらの活動を安全にするのか、危険にさらすのか。
テロリストの立場で考えてみましょう。
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テロリストにとって、おいしいお客はだれか
1.テロリストとしては、一番安全を守るのは「必ず金になる人質」。ただしこれは、「一番拘束したい人」なわけで安全だが自由ではないのは当然。拘束事件が頻発するわけ。
2.その次が「金にならないが、テロリストに有利な情報を流してくれる人」。
3.最後が「金にもならず。テロリストのためにもならない情報を流す人」。
佐々木氏は、その一番目が一等いい、ってことなのです。
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ジャーナリズムの意味とは
混同されやすいのですが、ジャーナリズムにとって重要なのは、ジャーナリストの安全ではありません。そうじゃなくて、自由で公正な報道です。それには活動の自由が不可欠。言い換えると、いくらジャーナリストがいても、テロリストのいいなりの報道をするような人は、百害あって一利なし、価値ある報道とはいえないのです。
そして、身代金目的などで拘束されちゃうんだったら、活動の自由が失われるわけなので、これも無価値。拘束されず、自由に活動できる、ってことが望ましい。
なので、テロリストにとって「おいしいお客」になってはダメ。
こういう本質を間違えちゃだめですっ。
なお、もちろん、テロリストの主張を客観的に報道することは意味があります。そのために、現地に入って、テロリストの許可のもとで取材活動ができれば、それはいいのです。そのためにも、「こいつをつかまえても金にならない」と思わせなければなりません。
「ジャーナリズムの命」は、「ジャーナリストの命」ではなく「自由で公正な報道活動」なのです。