燃費の不正問題で、三菱自動車とスズキが批判されています。
本日のお題は、国交省を叩こう!です。
三菱は確かに批判されて当然。燃費目標を達成するために、いい数値だけ採用したから。それは消費者を欺く行為。
それはそれとして、今回は、三菱とスズキに共通する「不正な試験方法」について、少し掘り下げます。
画像は、「スズキ 燃費の不正測定 合計26車種214万台に | NHKニュース」より
(目次)
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三菱の不正は3種類。
前にも書いたけど、ここを押さえてね。燃費不正のもととなった、走行抵抗値について。
1.2013年にeKワゴンシリーズの燃費を、測定結果の「いいとこ取り」で5~15%良く見せかけた。
2.1992年からの、高速惰行法による試験。国交省は普通の惰行法しか認めていない。
3.2000年頃からの、机上計算による抵抗値の算出。仕様変更、バリエーション追加時に、一々実車試験をするのを省略。
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スズキの不正
屋外走行試験による抵抗値の算出にかえて、屋内の測定値を机上でつなぎ合わせた数値を国内販売全車種で使用してきた。
その理由は、テストコースは海に近いので横風などの影響を受けやすいから、より正確な方法で計算した、とのこと。(おそらく、三菱と同じく、手間を省く、という面もあったでしょう。風のない日を選んでいたら、日程がかかるからね。)
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この不正を2分類する。
A:三菱の2と3とスズキは、「よりお手軽な方法を使った」ということ。
B:三菱だけで、スズキがやらなかったのは、三菱の1番。これは偽装。お化粧です。
このうちの前者、Aタイプの不正について、掘り下げます。
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走行抵抗値の実車試験方法は2通り。
一つは、(普通)惰行法。もう一つは高速惰行法。前者は欧州の方法。後者は米国の方法。国交省は、前者のみと決めていた。
ところが、それよりっも高速惰行法が簡単。また、要素試験に基づく机上計算でも、適切な計算が可能。なので、三菱とスズキはこれらをやったわけ。
開発から発売までは、3年程度かかるが、市場は待ってくれない。タイトな日程で、ローコストで行うためには、これらのほうが合理的と両社は判断したわけ。
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結果はどうか
あらためて、国交省の定める方法でやった場合と比較して、三菱は3%、スズキは5%弱の誤差範囲にとどまった。そもそも、5%程度の誤差は認められている。なので、両社は改めて型式認証を受け直すことはしない、とのこと。国交省もそれを認めるでしょう。
つまりは、これらの簡便法は、合理的であったことが証明されたと言っていい。
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タイでの試験は認められているおかしさ
ところで、今回明らかになったことがもう一つ。2013年、三菱がeKシリーズの燃費(走行抵抗)測定をする際に、いい数字が出やすいタイに行って行っていた、とのこと。(ひょっとして暖かいところのほうが、空気が軽いので空気抵抗が少ないのかもしれません。)ところが、なかなかいい数字が安定して出なかったので、試験を請け負っている子会社(MAE)の社員が、三菱に相談したら、三菱の性能試験部の管理職から、「時間がないので、いいとこ取りした数値を使え」と指示されて、偽装に及んだわけ。
で、笑えるのは、タイ。日本で発売するクルマの試験をタイで試験していたのね。で、これは「合法」なのです。
国交省のルールも、厳密なようないい加減なような。
おそらくルールを定めた1992年に、海外で試験するという発想が国交省になかったのでしょう。国内でも沖縄みたいに暖かいところもあるわけだし。カタログ燃費とは、しょせんそのくらい、いろんな誤差があるものです。
ならば。
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国交省は、ルールを見直すべき
両社のやった方法でもいい、とルールを変更すべき。それにより、米国向けと日本向けに分けて試験しなくてもいい、などなど、コストと日程が短縮できる。
それは、国際競争力を高めるし、日本の消費者利益にかなう。つまり日本の国益になるのです。
ルール違反は批判されて仕方がない。そうでないと、ルールどおりにやった他社がバカを見ることになる。しかし、そのことと、ルールを見直すことは別問題。
そこのところを、冷静に分けて理解したいよね。
もちろん、スズキも三菱も、ルールを変えてね、と国交省に働きかけるべきではありました。
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鈴木会長の胸の内
以下のエントリーで、スズキの鈴木修会長の謝罪が不適切、と批判されています。
確かに、不正は不正。批判するのは正論です。
しかし、鈴木会長が本当に言いたかったことは、こういうことじゃないかな。
三菱みたいな、偽装と違うよ、ということ。 本当の消費者利益を考えた試験方法をお上は定めてほしい、と思っていると思う。それを鈴木氏が今言うと叩かれるので、腹に収めているのではないでしょうか。
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