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アメリカは「巨大なリスク源」に~トランプ大統領のオッズが急上昇~

トランプ氏が共和党の大統領候補になることが、ほぼ確実となった。なので、「トランプ大統領」の実現可能性についての私のオッズ(注)は急上昇している。

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写真はBLOGOSより(AP)。

(目次)

 

  • トランプ氏のオッズは?

しかし、世間はそれほどでもないようだ。たとえば、2016/5/9 の日経朝刊「私見卓見」欄の米戦略国際問題研究所(CSIS)所長のジョン・ハムレ氏 は、「トランプ氏が大統領になる確率はせいぜい25%。」と読んでいる。

 

また、英国の大手ブックメーカー(賭け仲介)では、ヒラリー・クリントン3.25、ドナルド・トランプ29.00、バーニー・サンダース67.00である。つまりヒラリー勝利に賭ける人が圧倒的多数であり、トランプ氏は「穴馬」扱いだ。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙 ベッティング オッズ | アメリカ合衆国の政治 政治 | William Hill

 

  • 市場も反応していない

市場も反応していない。株価も為替も、動揺していない。

それには、次のような見方があるからだ。

2016/5/1 日経電子版「バフェット氏、トランプ大統領誕生でも「米景気妨げず」」 より引用。

 【オマハ〈ネブラスカ州〉=山下晃】著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは4月30日、定時株主総会を開いた。米国でトランプ大統領が誕生した場合のバークシャー社への影響を株主から問われたバフェット氏は「(バークシャーへの影響が)重要な問題なのではない」と答え、会場を沸かせた。


 バフェット氏は米大統領選においてヒラリー・クリントン氏への支持を公言している。トランプ氏の大統領就任には警戒感を抱いていると見られる。

 もっとも「トランプ氏になろうがヒラリー氏になろうがバークシャーはうまくやっていける」と自社の経営には自信を見せた。

 「数百年にわたって米国経済はうまくやってきた。ビジネスは社会に適応し、社会もビジネスに適応してきた」と述べ、「どんな大統領候補も米国の高い成長を止めることはできない」と米国景気に強気な持論を改めて強調した。

これはまさに、アメリカの正統派の論理だ。

 

しかしこれは、「トランプ大統領」のリスクを市場はまだ織り込めていない、というだけだろう。トランプが大統領候補に正式になった時点で、相場は大きく動くのではないか。有力投資家の誰かの一言で、それに乗っかった、ヘッジファンドやオプション取引によって、急変動する可能性がある。

 

もちろん、トランプは米国経済を破壊しようとしているのではない。しかし、トランプの意図とは別に、経済と政治は今や関連している。その関係性の方程式が複雑すぎて、市場の理解を超えているのだろう。それこそが、不確実性であり、リスクなのだ。

 

  • トランプ大統領のオッズは4割。

私は、今や4割程度と見る。つまり、もしも上記の賭けに参加するとすれば、トランプに張る。トランプに張ったほうが、「お得」だと考えるのだ。

なぜなら、現在の世論調査ではヒラリーがトランプより10ポイントほど高いが、それは、あくまで現時点の物に過ぎないからだ。そもそも、トランプ氏が共和党の大統領候補に選出される、と想定していた人が少数派なのだ。

 

3か月前の私の予想は、次の通りだった。

トランプが大統領候補になる確率は30%。トランプ対ヒラリーでトランプの確率が20%。

 

ところが、その30%の方になってしまった。そして今や、トランプ対ヒラリーである。ここに至ってのトランプの勝率は、40%と想定している。

これは次の3つの要素を考えて想定した。

(1)過去の大統領選でも下馬評をひっくり返す事例がいくつもあること。

(2)テロ事件など、米国世論がトランプ有利になる事件が起きる可能性があること。(3)ヒラリーが、スキャンダルなどで転ぶ可能性があること。

 

www.munokilan.com

 

  • トランプ大統領は豹変するか

もしも大統領になった場合、トランプは豹変するだろうか。この場合の豹変とは、選挙でがなり立てていた極端な政策を引っ込めて、穏健な政策をとるか、ということだ。
 
政策はブレーンに任せて、現実的で穏健な政策をとる、という見方もある一方、極端な政策を掲げ続ける、とみる見方もある。国際政治学者の六辻彰二氏の次の見方は一理ある。
 仮に大統領となり、優秀で理性的なブレインに取り囲まれたとしても、トランプ氏が従来の方針を翻すことは容易ではありません。

また、仮に連邦議会で共和党議員の多くが民主党議員とともに抵抗すればするほど、トランプ氏には「守旧派の特権階級に立ち向かうヒーロー」を演じるインセンティブが生まれます。「理性的に振舞うこと」をよしとしたオバマ大統領と異なり、仮に大統領に就任したとしても、トランプ氏の場合は「分かりやすく行動すること」に向かうことで立場が保ちやすいのです。また、自身が大富豪である以上、他の大企業からの政治献金に、他の政治家ほど顧慮する必要もありません。言い換えると、独立性が高いので、自身の方針を実行しやすいといえます。
より引用。
 
どちらになるか、全くわからない。トランプ自体もそれを全く決めていないし、考えてもいないだろう。つまり未来は不確実性の闇に覆われている。
 
  • アメリカが極端な国になる確率

私は、トランプが極端な主張を全て引っ込めるとは思えない。それはトランプなるものの自己否定になるからだ。いくつかは引っ込めるとしても、全部引っ込めることは考えにくい。
 
 
したがって、アメリカが極端な国になる確率は、トランプ大統領の確率と同じ4割ということになる。(すでに極端な国ではないか、という見方もあるが、それは置いておいて。)
 
なお、民主党については、夏の民主党全国大会までに、ヒラリーが自爆してサンダースになる可能性もある。そうなると最悪である。それも考え合わせると、5割、ということになるかもしれない。非常に高い。巨大なリスクである。
 
  • ユーラシア・グループもトランプを軽視

政治学者のイアン・ブレマー率いる、政治リスクの著名な調査会社であるユーラシア・グループは1月4日、2016年の世界の「十大リスク」を発表した。

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2016/1/4 日経電子版より引用。詳しい内容は「ユーラシア 10大リスク」でググるとユーラシア・グループのPDFで読める。
 
ここでは「トランプ」の文字はない。米国の大統領選挙には、欧州のリスクに関連してわずかに触れている程度だ。本来は、7の「予測できない指導者たち」の候補として入れても良かったように思う。それが「リスク」の捉え方だ。
 
そして、「トランプ大統領」は、この10大リスクを加速させることになる。米国の会社である同社は、主なリスクを米国以外に置いているが、今や米国自体が巨大なリスク源となったのだ。
たとえば、トランプのイスラム教徒などへの排外的、差別的発言は、テロリストの温床であり好物だ。したがってテロ組織は、トランプ大統領実現に向けて、大きな一押しを狙っているかもしれない。
 
 
美女を侍らせ得意絶頂なトランプ。美女の周りには棘が隠れているのだ。
 
 
 (注記)
「オッズが上昇」との表現は、本来は「実現確率が上がった」という意味。ところが、「日本の公営競技においては、しばしば払戻金の倍率(賭けた金が何倍になって払い戻されるか)のことをオッズと呼ぶ。」オッズ - Wikipedia
ので要注意です。 
 
 (文中敬称略)
 
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