iPadシリーズの最高峰(?)、iPad Pro。
Proの名の通り、デザイナーなどのプロ向けの製品です。
これを、一般人が「大きいiPad」や「PCの代わり」として使うのはどうか、というお話。
1年使ってみたレポートです。2017.11.4 iOS11についての追記もあります。
- 「PCの代わりになる大きいiPad」として購入
- PCの代わりになるか
- PCと根本的に構造が違う
- PC専用のアプリは使えない
- 「PCでできるどんなタスクもこなせます。」は本当か
- iPad Proは一般人にとって価値がないか
- iPad Proを使うとiPadの良さがよくわかる
- iPad ProをPCの代わりにどうかと思ったら、まずすること(追記)
こんな感じで使いたかったのですが・・・
画像出典:iPad Pro - Apple(日本)
「PCの代わりになる大きいiPad」として購入
私はiPad Proをモバイルツールとして、パソコンの代わりするのを主目的で購入しました。出先のカフェその他で、上の写真みたいにちゃちゃっと仕事するためです。
(あとで、iPadと同じサイズの9.7インチモデルも出ましたが、このエントリーは、12.9インチモデルのお話です。)
それまでは、PC,iPad,iPhoneの3つを持って出かけていました。それをiPad ProとiPhoneの2つで済むんじゃないか、と思ったのです。
で、購入して一年たった今はどうかといえば。
・外出時は、iPadとiPhoneの2つ持ちを基本。
・外で仕事をする時は、PC,iPad,iPhoneの3つ持ちです。
な~んだ。iPad Proを買う前に戻っちゃった、っていうことっ。
PCの代わりになるか
結論としてPCの代わりには、今ひとつ、なりませんでした。
最大の理由は、ファイルの連携。
確かに謳い文句どおり、WordやExcelなどのMicrosoft Officeシリーズは使えます。しかし、問題が。
それは、メールや各種のSNSなどとの連携が面倒、ということ。
たとえば、「メールに添付されて届いたワードのファイルを修正し、メールに添付して送る」、といった、仕事上のごく普通の作業が、今ひとつスムーズに行かないのです。
なぜかと言えば、iPadを動かしているiOSの基本構造によるのです。
根本的に、ワードファイルその他のデータファイルは、共通のデータとして保管されるのではありません。個々のアプリの中に保管されるのです。
で、アプリ間の連携は、アプリ相互に「連携」を働かせることで実現できます。
※2017年9月に、ファイル連携がスムーズになったとの触れ込みで、iOS11がリリースされました。それについては、本エントリーの文末で追記しました。
PCと根本的に構造が違う
PCの場合は、ワードやエクセルなどのデータは、共通のフォルダーに保管されます。で、個々のアプリは、共通フォルダーからそのデータを読み込んで作業し、作業後、共通のフォルダーに保管するわけです。
ところが、iOSには、根本的に、この、「(ローカルの)共通のフォルダー」という概念がないのです。
だから、上に書いた、「メールに添付されて届いたワードのファイルを修正し、メールに添付して送る」っていう場合、たとえばGメールで届いたファイルを保管しようとすると、基本的にはクラウド上のグーグルドライブに保管されます。それを、ワードのアプリで読み取るためには、グーグルドライブとワードアプリを連携させる必要があります。
いろんな人と、メールやいろんなSNSを使って仕事をするには、いちいち煩わしい、というところ。ファイルをリンクアドレスを使って送る方法もありますが、それも、相手の使用環境やITリテラシーによって、微妙です。(私のITリテラシーの問題もありますが。)
データの全てをクラウド上で扱うなら別ですが、それも、該当するクラウドに左右されます。
全てをグーグル系のサービスなどに統一すれば、いいかもしれませんが、それぞれに使い慣れた最適なアプリを使って、となると、そうも行きません。仕事相手もまた、いろんなSNSやソフトを使ってるわけですし。
その点、PCを使って、ファイルを扱う、という方法は、「枯れた」技術であるがゆえに、誰でも扱うことができます。メールに添付されてきたファイルを加工して保管、それをグループワーク用SNSの「チャットワーク」などを使って別の人に渡す、などが簡単。
クラウドサービスもいろいろ、SNSもいろいろ、であるがゆえに、共通プラットホームとしてのPCの価値はあるなあ、と思います。
PC専用のアプリは使えない
また、非常に当たり前ですが、PC専用のアプリは、iOSでは使えません。
と、いうことで、iPad Proは、PCの代わりとしては、今ひとつ、ということになりました。
「PCでできるどんなタスクもこなせます。」は本当か
アップルは次のようにアピールしています。
iPad Proは驚くほどパワフルなので、かつてはPCを使わなければできなかった作業を軽々と引き受けることができます。そればかりか、PCでしようとは考えもしなかった多くのこともこなせます。文書の作成も、Eメールも、ネットサーフィンも、スキャンも、レンダリングも、デザインも、デザインのやり直しも。あなたがやらなければいけないあらゆることを、タッチやスワイプ、すばやく書くといった簡単な動作だけでできるようになります。
アップルが謳っているように、PCでできるどんなタスクもこなせるのでしょうか。
できないことはないかもしれません。全てをクラウドベースで、アップルのiCloudを使い、各種アプリも全てアップルのものを使えば、アップルが謳っているように使えるかもしれません。
とはいえ、残念ながら、あたしはグーグルを始め、いろんなアプリを使うので、今ひとつ、アップルが謳うようには使えませんでした。他にウィンドウズのPCを使っていることも、大きな要素かもしれません。
では、
iPad Proは一般人にとって価値がないか
といえば、価値はあります。
最大の価値は、ともかく画面が大きいことです。12.9インチはモバイルとしては圧倒的。たとえば、図面などの大きい資料を見る時には、とても重宝します。もちろん新聞の紙面や動画も見やすいです。
なので
PCの代わりにはならないけど、「大きいiPad」としては存在価値あり
ということです。
とはいえ、ネックもあります。それは、大きさと重さ。
Wi-Fi+Cellularモデルで723g。iPad Air 2 444 gの倍近い重さ。
それと大きさ。大都市の通勤電車の中で、新聞や本を読むには、ちょっと大きすぎるのです。座っていればともかく、立って読むのは、よっぽどガタイが大きい人以外は、ほぼ不可能。
ですので、今はもっぱら、「ご自宅用」。
ネットで映画やテレビドラマを見たり、新聞を読んだりするのには、大きさが手頃。
iPad Proを使うとiPadの良さがよくわかる
とはいえ、改めて、iPadの大きさがすごくいい、と思います。
ちょっと調べ物、っていうときに、はiPad がベスト! iPhoneと同じくらい手軽で、画面はiPhone+の3倍くらい。
スマホ・タブレット市場では、大画面スマホに押されて、タブレットの売れ行きは今ひとつぱっとしません。ですが、スマホを大きくすればするほど、電話機としてのスマホは使いにくくなります。つまりスマホじゃなくて、「小さいタブレット」になっちゃうわけ。ですので、それぞれに存在理由がある、というのが私の結論です。
今持っているiPad Air2を買い換える時には、iPad Proの9.7インチモデルも候補になりますね。10.5インチのiPadも出るという噂もあるので、それも含めて検討です。
iPad ProをPCの代わりにどうかと思ったら、まずすること(追記)
もしあなたが、iPadかiPhoneを持っていて、あたしみたいに、「iPad ProをPCの代わりにどうかなあ」と思ったら、まずオススメすることが一つ。
それは、「iPadかiPhoneをPCの代わりにざっくり使えるか、試してみること」。
iPadやiPhoneとiPad Proの違いは、大きさやメモリーの容量以外には、あまりありません。たとえばアップルペンシルはiPad Pro専用ですが、iPhoneやiPadでも指やスタイラスペン(タッチペン)を使って「お絵かき」はできます。
当たり前ですが、OSはiOSで共通です。だから、iPad Proに過度な期待を持つ前に、手持ちのiPadかiPhoneで、PCみたいな使い方ができるかどうかを、いろいろ試してみるといいです。
そうすると、「これはできるけど、これはできない」とか、「こうやればできるけど、ちょっと面倒」といったことが判ります。その上で「自分的にはここまでできれば、自分のニーズを満たす」と思えば、iPad Proを買うのもいいと思います。そうすれば、ともかく画面が大きいし、記憶容量などの能力も高いので、きっと満足すると想いますよ!
これ、今にして思えば、そうしておけばよかったというあたしの反省ですっ。
と、いうことで、iPad Proを1年間使ってのレポートでした。一般人のあなたの参考になればうれしいです。
iPad Proを今ひとつ使いこなせなかったのは、単に、あたしのITリテラシーが低めだからかもねっ。
ちなみに、1年前にはこんな感じで、 がんばってアップルペンシルなども買い揃えて挑戦しました。iPad Proを検討する方は参考にしてねっ。
iPad Proをノートパソコンのように使いたい~PCかiPadか~ - むのきらんBlog
iPad ProでOfficeを使う時の落とし穴~ワードやエクセルを使う人に~ - むのきらんBlog
追記 2017.11.4 iOS11について。
2017年9月に、ファイル連携がスムーズになったとの触れ込みで、iOS11がリリースされました。
いくつも改良が行われましたが、たとえば2画面を同時に表示させる、SplitViewなどを使って、アプリからアプリへ、ファイルの移動やコピペが自由になる、ということでした。それについてのレポートです。
実際に使ってみると、移動が自由にできるものとできないものがあります。
たとえば、「写真」アプリから、「メール」アプリへは、自由にできます。写真をメールに付けて送る、なんてことがしやすくなります。これは従来でもできましたが、写真を指で引っ張ってメールに移すドラッグアンドドロップができるようになったので、使いやすくなりました。
一方、たとえばドロップボックスに収納しているファイルを、メールに添付する、なんていう使い方は、従来と変わっていません。基本的には、リンクURLを生成してそのアドレスとメールに添付する、というスタイルです。
また、PCっぽいファイル操作の象徴として、「ファイル」というアプリができました。ドロップボックスやiCloudなどの、ファイル系のデータを一括で表示してくれるものです。確かに見やすくはなりました。
ただし、iPad本体のファイルの収納は、従来どおり、特定・個別のファイル対応アプリの中に収納する、というものです。つまり、PCの場合は、ファイルを、PCの中に(特定のアプリの中ではなくて、いわば中立的に)収納するのですが、iPadの中のファイルの収納形式は、従来と同様です。
iPadも、工夫すればPCっぽい使い方はできるけど、当たり前ですが、PCとは違います。
PCとの間には、深い谷がある。そこを、ユーザーの工夫で乗り越える。もしくは、そういうものとして使うものだ、ということを改めて実感しました。