むのきらんBlog

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自動運転の本当の障害とは

自動運転が話題です。自動運転を実用化する上で、本当に障害になるものとはなんでしょうか。

それは、技術でも法制度でもありません。既得権者の反対と、それに惑わされる人の心です。

 

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画像は、ロボットタクシー株式会社 » 神奈川県藤沢市で公道での実証実験を開始しました、より。

 

(目次)

 

たとえば、この記事。

blogos.com

 

  • 法律が問題か

自動運転については、最初は、そんなこと技術的にできるの? 日本は道が狭いし、わかりにくいし、といった疑問が出ます。

次に、少し勉強すると、上の記事のように、法制度の整備が問題だ、という話しになります。

「自動運転」の実用化で、もっとも障害になってくるのは、技術や交通情報システムそのものではなく、法制度だといわれています。万が一事故を起こした場合に、いったい誰が責任を負うのかがわからないからです。

これ、弁護士とか、法律の専門家は良く言いますよね。

しかし、ちょっと待った。

もちろん、法制度は整理が必要です。

 

  • 条約が問題か

事故の際だけでなく、そもそも車には運転者が乗っていることが必要、という条約があるので、その条約を変えるか、運転者の定義や解釈を変えるか、が必要になります。後者の方向なのが、アメリカやフィンランドなどです。

条約には、ジュネーブ条約とウィーン条約がありますが、いずれも条約が作られた時代には自動運転は想定外だったのです。いわば、日本国憲法が、同性婚やLGBTを想定していないようなものです。

自動運転車 - Wikipedia

 

なお、加盟して批准した条約は、法律と同様の効力がある、ということを押さえておきましょう。日本は、ジュネーブ条約は批准、ウィーン条約には加盟していません。

 

  • 自度運転車が事故ったら

条約の問題はクリアされたとして、事故の際の問題が残ります。ただし、この法制度は実は本質的な障害ではありません。

 

保険も含めて、十分対応可能です。所詮、法制度は、コスト負担の問題に過ぎない、と割り切ればいいわけです。自動運転のメリットは、事故の際に発生するコストを補うに余りあるからです。そして、自動運転を導入すれば、事故は劇的に減るのです。(すでにスバルが自動ブレーキで実証してくれています。)まず、その認識が重要です。

 

したがって、賠償責任といった民事上の問題は、社会トータルでみれば減ったコストについて、残ったコストを誰が負担するかという問題に帰結します。仮にこれを自動車保険でカバーしようとすれば、「メーカーには巨額の懲罰的賠償を」みたいな主張を除けば、保険料の総額は、現在よりもお安くなるわけ。

 

  • 誰も重大な過失がない場合、被害者をどう救済するか。

民法第717条には、工作物責任というのがあります。これは、建物のたとえばタイルが突然剥がれて、歩行者が怪我をした場合、建物の所有者などが(ちゃんと点検してたりして無過失でも)責任を負う、という法律。歩行者などの第三者を保護するための法律ですね。(ただし、瑕疵があることが条件。)

工作物責任(こうさくぶつせきにん)とは、土地の工作物の瑕疵(かし)によって他人に損害を与えた場合に、工作物の占有者・所有者が負う賠償責任をいう(民法第717条)。土地工作物責任ともいう。

工作物責任 - Wikipedia

 

これを自動運転車に適用すべきではないでしょうか。所有者に過失がなくても、他に過失がない限り、所有者が責任を負うとしておく。そして所有者には保険の加入を義務づける、ということ。基本的には、建物に限らず、クルマでも、なんでもモノを所有するということは、責任がある、というのが私の意見です。

 

  • 自動運転の罪を刑法で裁けるか

一方、刑法や道路交通法など(ここでは総称して刑法と呼びます)はどうでしょうか。

たとえば技術レベルが低いことを知りながら、なんでも出来ます的な誇大広告をして、ユーザーを騙し、事故を招いたとしたら、そのメーカーは罰せられるべきです。

では、そうでない場合は、技術的な想定外、技術的な限界の現象に対してどうするか、ということ。それは、刑罰にはそぐわないと思います。

したがってメーカーは、技術的な限界をきちんと告知することが重要でしょう。技術には常に限界があります。今だって、いろいろな注意書きがマニュアルに書いてあるけど、それと同じ事。(注意書きがマニュアルに書いてあればいいってもんでもないので、わかりやすく伝えることはもちろん大切ですが。) 

 

  • 本質的な障害はなにか。

それは2つ。 1つは、既得権者の反対。もう1つは人の心です。

 

  • 既得権者のすり替えに気をつけよう

前者は、利害に関わることなので、反対することは本人たちにとって合理的です。 既得権者の反対に対して、最大多数が最大幸福を追求すれば、これは打ち破れるのです。

ただし、そこで障害になるのは感情。 既得権者は反対するときに、もっともらしい主張をします。安心安全とか、中小企業を守れとか、地方を守れとか、などなど。

 

それが本当にこれらにつながるのか、ということを客観的に考えることが、賢明な社会にとって不可欠です。

 

交通事故は、年間約50万件起きています。そのうち、死亡者は年間約4000人。しかし、自動運転の事故は、ニュースバリューがあるので、大きく取り上げられ、過大に安全性への疑問が騒がれるでしょう。だからこそ、客観的に見ることが重要です。真に人の命を大切に思うならば。