むのきらんBlog

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宅配問題の「正しい」解決法~再配達料金は取れるか~

宅急便のヤマト運輸が、宅配料金の27年ぶりの値上げに踏み切ろうとしています。その背景には、配送現場の労働過重と人手不足があります。

 

配送現場があえいでいる、大きな要素が、不在による再配達。

およそ2割が不在による再配達が必要とのこと。共働きなどの条件が重なると、不在率はさらに高まります。一人暮らしはもちろん、結婚した女性が外で働くことが当たり前になっている今、不在率は高まることはあれ、下がることはなかなかないでしょう。

クロネコは、宅配ボックスの普及など、様々な対策を進めるそうです。とはいえ、宅配ボックスの設置にはお金やスペースが要りますので、急速な普及は難しそうです。職場、コンビニ、駅などで受け取るのも、モノによってはいいですが、アマゾンの箱を担いで家まで持って帰るのは、かなりしんどそうです。

(そのあたりクルマ社会か電車社会か、という交通手段にもよるでしょう。)

 

値上げには理解を示す声もある反面、高齢者を中心に、「自分は必ず家にいて、だいたい一発で受け取ってるのに、なんで値上げしなきゃいけないんだ」という反応もあります。

 

どうすればいいのでしょう?

それを考えることで、値上げに踏み切ったヤマトの戦略も見えてきます。

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画像出典:写真素材 足成【フリーフォト、無料写真素材サイト】

 

単純な解決は再配達料金

経済学的に考えると、答えは単純です。

Aさんには一発配達。Bさんには不在で二回配達。となったら、Aさんには何も責任はありません。不在となったコストはBさんが負うのが基本です。つまり、再配達の料金を追加で取ればいいのです。

これは、考えて見れば当たり前。ちょうど、近くにいるAさん、遠くにいるBさんの二人に荷物を送ろうとしたときに、Bさんへの運送料金が高いのは当たり前。だって、その分輸送のコストがかかるからです。

不在、再配達、というのは、Bさんのところは、不在がちなので輸送コストがかかる送り先ですよ、という意味です。だから、再配達料金を徴収するのは理にかなっています。

 

再配達料金を取ることの問題点

ところが、この再配達料金を取る、というのが結構難しいのです。

2つのケースを考えます。

・自分でネット通販を注文したケース。

・他人に贈り物をするケース。

 

ネット通販を注文したケース。

ネット通販を注文する際に、「配送料無料」につられて選ぶことってよくありますよね。そうしておいて、不在だったら、再配達料金を取られる、としたらどうでしょうか。素直に払って受け取るのは、ちょっと抵抗があります。

まして、クロネコの人がピンポンした時に、たまたまトイレに入っていた、みたいなとき。もうちょっと待ってもらったら、よかったのに、自分が悪いんじゃない、クロネコが悪いんだ、というクレームも出るでしょう。

 

他人に贈り物をするケース。

まして、他人にお中元やお歳暮を贈る時は、一層ハードルが高くなります。

正直、余りほしくもないものを頂くこともあります。それを、再配達料金を払ってまで受け取るか、というとちょっと微妙。では、贈る側にその費用を後で請求するのはどうか。贈る側としては、もう金額を確定しちゃった、という気持ちです。なので、あとから再配達料を請求されるのは困ります。

 

と、いうことで、再配達料金を頂くのは、なかなか難しいのです。

 

では、どうしたらいいか。簡単な解決法があります。

それは

逆にする!

こと。

 

つまり、再配達料金をあらかじめ配送料金に含めてしまいます。その分、値上げも必要でしょう。で、一発配達できた場合は、ポイントを差し上げるのです。そうすると、会員になってネットで時間指定したり、職場、駅、コンビニなどで受け取るなどすれば、ポイントがもらえるのでそういう「良い子」になろうとする、ということ。

 

ちょっと考えると、この2つは同じです。しかし、「参照点」と「評価者」が異なるのです。

「参照点」というのは、スタートラインのこと。

基本の料金に加え、後で追加料金を負担するのは、非常に負担感があります。さきほどのトイレに入っていたケースなどは、割り切れない思いが残ります。

一方、後者の方法だと、ポイントはあくまで、もらえてラッキー、ということ。言い換えると、お客の都合ではなく、クロネコ側に、「助かった。ありがとうございます。」とポイントを贈る権利(?)があるわけです。つまり、「評価者」が、お客の側ではなく、クロネコ側になる、ということです。お客が便秘で長時間トイレであろうが、長電話だろうが、本当の不在だろうが、クロネコのドライバーにとっては、同じことです。だから、クロネコ側が評価すればいいわけです。

 

ちなみに、この「参照点」というのは、応用の利く概念です。ランチセットにコーヒーとデザートがついていると、「お得」と感じます。一方、コーヒーとデザートが別料金ですよ、というと抵抗を感じます。

買い物をするときに、おまけがついてくることがあります。考えて見ると、その費用はお客が負担しているわけです。ですが、お客は「お得」に感じがちです。

こんな風に、人は無意識に、参照点を持って判断しているわけです。一般にセット料金で込み料金よりも、追加料金を払うほうに負担を感じがち、ということです。

 

ただし、問題点もあります。それは、

基本料金を値上げせざるを得ない

ということ。

そこには、強い抵抗があります。だから、この問題はなかなか解決できなかったわけです。とはいえ、配送業者の現場の労働条件は限界です。また人手不足も深刻です。

そうなった今こそ、値上げを受け入れる余地が出てきたのだと思います。

 

したがって、一斉値上げをした上で、再配達が不要な「一発配達」に対して、あの手この手で優遇策を打ってくるでしょう。

 

なぜ今、ヤマトが抵抗の大きい値上げを打ち出したか。それには、このような考えがあるとあたしは思います。